パーキンソン病の患者でもある入所者の死亡事故を通して、介護事故の問題点を検証している。病状の記載がない事故報告書で、どれほどの事実関係が把握できるのかという問題提起をした。そして、市役所側がこの程度の報告に疑問を持たず、立ち入りはもちろん、事情を詳しく聞くことさえしていないことは、事故報告書の形骸化につながることも示唆した。
この事故は、入所者が救急搬送され、搬送先病院で死亡に至っているが、事故報告書によれば、事故翌日の零時20分という時間に、警察が事故現場の確認や第一発見者への聞き取りなどをおこなったとされる。これだけの事故であるにもかかわらず、施設側はなぜか警察への連絡を行なっていない。(警察への連絡欄は、「無」に丸印)
警察への連絡は搬送先病院によるものと思われる(医師法は異常死の場合、24時間以内の警察への届け出を義務付けている)。未明の5時前後に事故が起き、入所者が亡くなる23時過ぎまで、施設側は関係機関への連絡を怠ったのではないか・・・。事故当日の12月29日といえば年末、しかも金曜日であり、翌日からは市役所も休みに入る。そうしたことを考えれば、市役所や警察への早期の連絡が必要だったのではないだろうか。
事故内容は、入所者が紙パンツ1枚の状態で、ベッドの枠に首をかけて窒息したという、極めて痛ましいものである。パーキンソン病の入所者が未明の4時前後に紙パンツ1枚でベッドに座っている状態、それを20分以上放置したことは通常では考えられない。人手不足という問題とは別次元の話であろう。
取材班が事故報告書を読んだ限りでは、さまざまな疑問がわいてくる。当然市役所側も疑問に感じるはずなのだが、本件については事故報告書以外何も残されていないという。
公文書がないということは、公式な事故原因の究明はもちろん、事情を聞くことさえなかったということになる。役所の怠慢、不作為と言わざるを得ない。なんのための事故報告書なのかという問題がここでも明らかとなる。
事故報告書が出されても、市側がその記載内容に疑問符をつけることがなければ、施設側の問題は放置される可能性が残る。事故報告書の<再発防止に向けての今後の対応>欄には、今後のパーキンソン病の入所者への対応が3行記されているに過ぎない。それも、事故当日の11時からたったの5分間話し合いをしただけであることが記されている。何かの間違いではないかと疑いたくもなる。
役所の対応が甘いから、こうした杜撰な事故報告書が出され、本当の改善策がとられることなく事故を誘発するのではないだろうか。そうなるとまさに、役所の不作為が介護崩壊の一因という声も信憑性を帯びてくる。
つづく