輸入住宅最大手のS社がプレカット工場を探している。従来の取引先のフレーマー数人が辞めた為供給を断ってきたことと、昨年のハウスオブザイヤー・イン・エレクトリック大賞の受賞で、受注が急増していることにより同社はサプライヤーを強化する必要性に迫られているのだ。
昨年6月の建築基準法改正により、平均で40%もの着工減少が3ヶ月間も続いた住宅業界でも、低層4号物件に対する条件緩和により、今年に入ってからはようやく需要回復の兆しが見えてきた。
中でも2×4工法住宅は、耐力壁によって耐震強度を確保できるために今回の基準法改正の影響も比較的軽微であった。しかも昨今の資源高騰による鋼材の値上がりに悩む鉄骨系メーカーの苦戦を尻目に、受注も旺盛となっている。
一方、プレカット&フレーミングのサプライヤー分野では、九州地区の2×4工法住宅普及の伝道師的役割を担ってきた『かねちょう(現・西日本フレーミング)』、や『博多木材工業』の廃業や倒産により供給力が増えていないのが現状だ。今回S社との取引を2社ほどに声をかけたが、どこも受注分の処理に手一杯で有り難がらないのだ。
これまでは輸出で稼いで景気回復を果たしてきた。しかし、アメリカがサブプライムローン問題による金融不安と景気後退を起こしたことで、外需に依存してきた日本の景気回復も頓挫しつつある。
こうした環境下で住宅着工戸数は一過性の基準法改正の影響だけでなく、確実に80万戸時代へとまっしぐらに急坂を転がり落ちつつあるのだ。
サプライヤーたちは、こうした需要背景を読みつつ将来に備えた設備投資やフレーマーの育成を図っておくべきではないのだろうか?(株)データマックスでは『木材・建材業界レポート』を作成中であるが、その取材中に各社に今期の見通しを尋ねたところ前年比でプラスと答えた企業は1社も無かった。10%減から50%減まで予想は様々であるが、マンション向けが主体の企業ほど前年比での落ち込みが大きい。
しかも見積もりから着工までのターム(期間)が、従来よりも数ヶ月も長くなってきているため、資材高騰の影響をもろに受けている。また、例えば鋼材価格が前年同期比40%以上も上昇しているように、原材料費の高騰は企業努力でカバー出来る限界を遥かに超えてしまっている。需要減退と資材価格急騰の挟み撃ちで流通や建築業者の耐力は疲弊しきっているのだ。
今年は建設業界に淘汰の大嵐が吹き荒れる。取引先への疑心暗鬼がつのる一方であるから、供給パイプも必然的に細くなる。暗い1年になりそうな予感がする。
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