★☆目次★★
01● 崩壊する介護 2 ~「事故報告書」発端で事件明るみに~
02● こども病院移転問題 ~人工島選定理由崩壊~
03● こども病院人工島移転再考
01● 崩壊する介護 2 ~「事故報告書」発端で事件明るみに~
特別養護老人ホーム「L」におけるストレッチャーからの転落事故、そして隠蔽との指摘も出たその後の系列病院における虚偽診断書作成事件。病院―特養が同系列であるからこそ起きた事件といえるかもしれない。
実は、当該事件の死亡診断書には「脳挫傷による外傷性ショック死」と記載されながら、死因の種類を記入する欄はなぜか「病死及び自然死」とされていた。
本来、死因の種類には「転落」と記され、事故として「異常死」扱いした上で、24時間以内に警察へ届け出る必要があったはずである。しかし、実際には真実が隠蔽され、警察への届け出もなされていなかった。
真相が明らかとなった発端は、特養「L」から福岡市に提出された1枚の「事故報告書」である。本社取材班が情報公開請求し、入手した事故報告書をご覧いただきたい。
ストレッチャーからの転落死事件本文 (拡大はこちら)
「事故報告書」は何を語る?
この事故報告書は事件を引き起こした特別養護老人ホーム「L」が福岡市に提出したものである。じっくりと見ていただきたい。
もちろん、この報告書が提出された段階では警察は何も知らされていない。事件にもなっていないのである。しかし、報告書の内容を確認した福岡市は事故の重大性を認識し、警察への連絡を指導したとされる。
事件として警察が動き出すのはそれからである。
結果的に、12月になって病院副院長と担当医師、特養職員2名が書類送検される。市役所側は、この段階まではきちんとした指導・監督をしていたということになる。
この事故報告書を安易に取り扱っていたら、人ひとりの命が失われた事案の真相は、闇に葬られていたことになるのだ。中央区役所・介護保険課の指導は的確だったといえよう。
それでは、事件の発端となった「事故報告書」とはいかなるものか、簡単に説明しておきたい。
介護保険事業者(介護サービスを提供する側)は、事故等が発生した場合、保険者(市町村 福岡市の場合は各区の介護保険課)に対し事故報告を行なうよう義務付けられている。
県ごとに事故報告の要領が規定されており(福岡県の場合「介護サービスにおける事故報告に係る報告要領」)、事故報告についての詳細が記されている。
福岡県では、報告すべき事故の種類について以下の5項目に分類している。
(1)利用者のけが、死亡等
(2)食中毒、感染症、(MRSA)レジオネラ症、インフルエンザ、疥癬等)及び結核等の発生
(3)職員の法令違反、不祥事など
(4)事業所での災害その他サービスの提供に支障をきたしたもの
(5)その他(利用者が行方不明になった等)
ストレッチャーからの転落・死亡は(1)に該当する。特養「L」は、この要領に基づき、福岡市に対し事故報告をしたのだが、報告の時期、内容等には大きな問題があった。
02● こども病院移転問題 ~人工島選定理由崩壊~
市長会見説明に矛盾相次ぐ
ヘリポートは「機上の空論」
反対の声が日に日にたかまる子ども病院の人工島移転。吉田市長は会見のたびに様々な理屈をつけて正当化しようと努めてきたが、次々にその前提条件が崩れはじめている。
当初、人工島に子ども病院を移転させれば、ヘリポートができると自信満々の市長だったが、地元テレビ局の現地取材で、人工島の空域では「上空待機」の可能性が大きいことが判明。それ以来へリポートの話は聞かれなくなった。
人工島上空は、福岡空港への航空機が進入する空域である。こうした事態が想定できていなかった「いい加減な計画」であることが明らかとなっていた。まさに「機上」の空論になってしまった。
「増床」も夢物語?
10日の市長会見では、市側から新しい子ども病院のベッド数を大幅に増やすかのような話。翌11日の新聞各紙も、朝刊で「増床」と報じていた。
しかし、福岡市のベッド数は限られている。簡単に増床はできないはずと心配していたが、案の定、権限を有する福岡県との話がついていなかったことを地元テレビ局にすっぱ抜かれた。
現実的な対応は、福岡市が有する病院、つまり「市民病院」のベッド数を削り、新子ども病院にもっていくしかないのである。
当然、市民病院の患者や経営自体に大変なマイナスをもたらすことになる。はいそうですか、と言える話ではない。
最終的には県や厚労省の判断を仰ぎ、特例を認めてもらうしかないとされるが、これは極めて難しい話だという。増床が難しいというのなら、なにも人工島の広大な土地を買う必要はなくなる。
次々と崩壊する人工島移転のメリットと選定理由・・・。重ねて言うが人工島の広大な土地が必要だという根拠はなくなっている。
虚偽とまでは言わないが、「はじめに人工島ありき」でスタートしただけに、後付けの与太話はオチもお粗末である。
気になったのは新聞各紙の記事に、市側説明の検証がなされていないことである。福岡市内の病院ベッド数増床が難しいことは、市役所職員をはじめ多くの医療関係者が知っていたことである。会見発 表の内容について、吟味する姿勢をもっていただきたい。
市役所発表のたれ流しでは市民に本当のことが伝わらない。
その1 当事者の声に耳を傾けよう
6月10日の定例記者会見で、吉田宏市長はこども病院・感染症センターと福岡市民病院の市立2病院について、市病院事業運営審議会の答申を受けた今後の取り組み方針を発表し、こども病院の新たな整備場所は、人工島への移転を軸に最終判断し、7月に正式決定する意向を示していた。
しかし、こども病院の人工島移転には根強い反対がある。3月21日には、こども病院に通院・入院・療養するこどものお母さん達で構成する「こども病院の人工島移転を考える会」が、約7万4000人分の「移転反対署名」を提出した。この後も、署名の数は増え続けている。こども病院の人工島への移転はこども達の命に関わる問題だけに、市民の「合意と納得」が欠かせない。反対意見を無視して頑なに「単独移転」を押し進めるばかりの市長の姿勢はどうにも解せない。
そもそも、「福岡市病院事業運営審議会」には、移転場所についての諮問すらしていない。つまりは「人工島ありき」で意志決定がなされている可能性が高い。市民の生活と命を守る者として、政策決定においては何を優先すべきなのだろう。わが市民の命だろうか、それとも「お得意さん」の損益なのか。そこを見誤った為政者がどうなるかは、今、韓国で起こっている事態をみれば一目瞭然であろう。
吉田市長は「市民の声を聞く」ことを市政運営の基本に据えた。山崎前市長が唐突にオリンピック招致を打ち上げ、反対の声が上がる中、計画を進めたことを徹底的に批判したのが吉田市長だったからだ。しかし、その時の姿勢はどこにも感じられない。
「MAX市政ニュース」においては、今後、こども病院に関わる「当事者の声」をお届けする。はじめは、「こども病院の人工島移転を考える会」で活動するお母さん達の生の声だ。ネットIBチャンネルにおいて配信を予定しているので是非みて欲しい。また、より詳しくは次週からのメールマガジンに掲載する。
「聞きたかけん」を標榜するのであれば、是非「当事者の声」に心耳を澄ませてほしい。
日下部晃志
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