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【行政コラム】改革派前市長による希望の提言(12) 木下敏之前佐賀市長
地域ニュース
2008年6月18日 14:00

まだまだ削れる行政のコスト

■スピードが大事

 夕張市役所の財政破たんの原因は、「歳入の減少に対応したサービス水準の見直しや人口の激減に対応すべき組織のスリム化も大きく立ち遅れ、総人件費の抑制も不十分であった。」ということですが、このことは他の自治体の今後にもズバリ当てはまります。

 市町村の財政は収入を住民税、固定資産税でまかなっているため、働く世代の人数が減少すると税収が減っていきます。一方で、歳出の主な分野である高齢者の福祉・医療関係の経費は、高齢者数の増加、特に後期高齢者数の増加により、どんどん膨らんでいきます。このままでは、市町村財政は厳しくなるばかりです。

 しかし、現実には、住民サービスの削減は各論賛成、総論反対になってしまいます。行政改革も本当に痛みが出るものについては、なかなか進みません。
夕張のように、財政がこれからどんどん厳しくなっていくのに、サービス水準の見直しや行革が遅れてしまいがちになるということを意識しておかなくてはなりません。

 大事なことは、スピードです。早すぎるのではと思うくらいでよいのです。ゆっくりやっていれば、税収減と高齢者福祉費用の増大と国からの交付金の減少などにより、どんどん財政は厳しくなっていきます。将来の発展のための分野に投資するお金を作れないばかりか、何年かおきに、削るだけの行革を何度も何度も繰り返すことになります。

■地方自治体はやることはやったか?

 市長在任中から今に至るまで、行政関係者から「地方自治体は財政が厳しいが、やることはかなりやったと」いう主張を聞くことがあります。残念ながら、多くの市民の皆さんが思っているとおり、まだまだ削減することができるところ、効率化ができるところは山ほどあります。

■あらゆるところで共同化を進める。

 すでに事例も少数ながら出ているものもありますが、大きくコストダウンの効果を上げるものとして、業務の共同化に直ちに取り組むべきです。佐賀市役所では、隣町の下水の処理を受け入れましたが、80億円という効果がありました。ゴミ処理や下水処理などを共同化することは、これまでの投資費用を分担してもらえるので、とても大きな効果があります。規模の利益も働きます。

 人口の減少が始まっている地域では、ゴミの焼却量はこれから減り続けますので、地域全体を見ると焼却炉の能力が余ってきます。近くの町の焼却炉が傷んできたら、そのまま立て直す計画が進む前にゴミを受け入れたり、延命化を図って共同で立て直したりすることが出来ないかを検討することです。

 そもそも、市町村合併などを進める前に、業務改善と共同化を進めるべきであったのに、この手順を飛ばしてしまいました。合併後の自治体の枠を超えて共同化したほうがよいものもいくつもありますが、手付かずのままです。
 
■例えば基幹ITシステムの共同化

 例えば、基幹コンピュータシステムの共同化などは、すぐにも取り組むべきものです。お隣の韓国は、約240ある地方自治体が共同のシステムを利用しています。私から見ると、東京23区はなぜメーカーもバラバラに基幹システムを調達しているのか、不思議で仕方がありません。

 システムを共同化すると、企業が自治体に提出する各種の申請書の様式も統一されるので、企業の負担も減ります。企業は自治体ごとに申請書の様式が少しずつ違うために、非常に苦労しています。効率化を図るときに、役所のことだけを考えるのではなく、住民のことや企業にも注意を払っておく必要があります。

 自治体内部のPCやプリンター、コピー機の機種を統一し、台数を増やして入札にかけることは行われていますが、これを拡大し、一つの県で市町村が共同して入札にかけると膨大な台数になるので、相当のコストダウンになります。

 それ以外にも、東京は税を都庁が一括して集めていますが、同様に市町村の地方税も、少なくとも都道府県単位で共同して徴税作業に当たるべきでしょう。自分のところの課税の仕方に独自性があるという人もいますが、そのようなつまらないこだわりは直ちに捨て去るべきです。京都府が府内の市町村の税や住民票関係のITシステムを共同化しようとしていますが、このような共同化を進めることによって大幅に費用は減らせます。

 消防なども一つの県に、いくつもの指揮所がありますが、警察は県警一本です。地方分権とは言いますが、何でもかんでも市町村がやったほうが良いことばかりではなく、県内一本化したほうが良いものも沢山あります。

■コストダウンの実現は、首長の指導力にかかっています。

 他にも「多能工」ですとか、新技術の導入ですとか、資産売却のやり方ですとか、コストダウンする方法は山ほどありますが、企業で働く皆さんにとっては、どれも当たり前のことが行政にはほとんど導入されていません。
 
 ここで私が皆さんにお伝えしたいのは、現場の担当者がどんな手法を使うかということ以前に大事なことがあるということです。それは、大きな効果を上げるコストダウンが実現できるかどうかは、首長の決断にかかっているということです。「財政再建のために何をすべきか。職員に指導をお願いします。」といわれることも多いのですが、効果の大きな対策ほど幹部の強烈なリーダーシップが必要となります。

 効果的な業務改善案は部局をまたがるものも多く、縦割りの壁を打破することが不可欠ですが、その調整に幹部が乗り出してくれないと、とても職員同士の話し合いで進むものではありません。公会計制度によって、大福帳だった役所の会計制度が複式簿記化されます。

 霞ヶ関の埋蔵金騒動のように、新公会計制度によって不要資産が「見える化」されることの効果は大きいというお話がありますが、関西地区の市営地下鉄の売却問題のように、地下鉄売却を公約としていた市長は、反対派が擁立した候補に敗れました。売却額が大きく効果があるものは猛烈な抵抗を受けます。トップが反対を押し切っても実行するかどうか。見える化したこととバランスシートが改善されることとは、まったく別のことなのです。

 笑い話のようなことですが、市長などの上級幹部や議員の大部分が複式簿記を読むことが出来ません。霞ヶ関もそうです。企業を経営していくために会計の情報は不可欠の情報ですが、その持つ意味を理解するだけの知識が無い人にとっては、「見える化」しても、ただの数字の羅列に過ぎないのです。
 
 ボトムアップが大事という人がいますが、効果の大きなものはトップダウンでしか実現できないのです。(続く)
 
 
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