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【行政コラム】改革派前市長による希望の提言(9) 木下敏之前佐賀市長
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2008年6月13日 20:29

子育て支援と学校教育の充実 佐賀県教育委員会との対立

■二期目の最重点分野は子育て支援と教育の充実
 就任後2年間は、バブル的な事業の整理と行政改革に重点を置きましたが、これから続く人口減少と働く世代の減少考えると、行政改革で生み出したお金を子育て支援策に集中して投資しようと考えました。

 一期目の後の選挙は共産党との一騎打ちでしたので、無事に二期目に入ることが出来ましたが、二期目の私の選挙公約は、大きく2つ、産業振興と教育・子育て支援でした。
 特に要望の強かった保育所の定員を約1,200名から、6年間で600名以上増やしました。待機児童の解消に努力した結果、2005年4月時点で何百人といた待機児童がゼロまであと一歩というところまで近づきました。

 その他様々な対策を講じましたが、佐賀市の出生率は、1998年度が、1.48、2004年度が1.47で、減少を押しとどめることが出来た程度で、増加に転じるところまでは行きませんでした。

 できれば、福岡市にある有名な高取保育園や仁愛保育園のような素晴らしい保育園ばかりにしたかったので、保育所の質の向上も応援したかったのですが、そこまでは出来ませんでした。

■西鉄バスジャック事件
 私が佐賀市で行なわれていた公教育に強い疑問を持ったのは、2005年5月に発生した西鉄バスジャック事件でした。佐賀市内の高校生が事件を起こしたのですが、中学校でいじめられていたという噂が根強く流れていました。市の教育委員会が調査したのですが、結局何もわからないままに終わりました。その時の関係者の受け答えや調査の不十分さが、疑問を抱くきっかけで、学校の先生も市の教育委員会の事務局も、住民の方も市長の方も向いていません。県の教育委員会の方を向いています。小・中学校の先生の人事権は、市の教育委員会ではなく、実際は、県の教育委員会にあるからなのです(政令市は市役所に人事権があります)。

 一般の教員の人事だけでなく、誰を校長にするかということさえも市の教育委員会では決定できないのですから、教育刷新どころではありません。逆に言うと、これほど教育現場に県の教育委員会の影響力が強いので、文部省が動かなくても、都道府県がやる気になれば教育はいくらでも変えることができるのです。だから政令市は、やる気になれば、文部省の意向など関係なく、教育をいくらでも変えられます。

■ブラック教員リストの存在
 住民からは「私の子供の学校に変な先生がいる。何とかしてほしい」という匿名の訴えがよくきていました。両親にしてみれば、子供が人質にとられているようなものですから、学校に文句も言えない。覚悟を決めて私に手紙を出すわけです。

 当時の佐賀市教育委員会には、担当課長が個人的に作成したもののようでしたが、ブラック教師リスト、ブルー教師リストがありました。そうした先生が、各学校にだいたい1名ずついました。佐賀市だけで40人。内容を見ると驚くばかりです。受け持ちの学年の平均点が必ず大幅に下がる英語の先生、質問を一切許さない先生……。

 ですから、どうしても人事権を手に入れて、こんな先生を教壇に立たせないようにしたかったのです。
しかし、佐賀県教育委員会は決して佐賀市に人事権を渡しません。結局、そのような教師をはずすことは出来ず、指導力不足の教員による授業を補充する支援指導員を市の負担で派遣する制度を2003年4月から導入し、2005年度は市単独で約10人を学校に派遣することに留まりました。
 
■校長の任期を3年以上にする。
 校長先生の任期もそれまでの1年~2年から3年に延長させました。東京都は任期が5年だそうですから、それに比べると恐ろしいばかりの短さです。地域の協力を得るためにも、ある程度の期間がなければ、学校をよくすることはできません。校長は学校の経営者ですから、どんな人が校長かで学校はがらりと変わります。

 校長の任期を長くすれば、教頭の任期も長くする必要がでてきます。そうすると、校長、教頭になれる人が極端に減りますから、校長の任期の長期化は佐賀の教員社会で大きな波紋を呼びました。
 その地域で教育をしっかり行なおうとしているかどうかは、校長の任期をみれば大体わかると思います。平均して一つの学校に2年程度しかいないようではとても教育の内容を充実させることなど出来ません。

■学校崩壊を起こした校長の処遇をめぐる対立
 教員の人事権だけでなく、様々なことで佐賀県教育委員会とぶつかりました。 例えば、ある学校の学校崩壊事件を巡る対立です。学年崩壊が5月あたりから発生していたのですが、私に保護者からの匿名の直訴状が届いて対策を指示するまで、有効な対策が打たれておらず、すでに学校崩壊に近い状態でした。

 私の指示があって、市の教育委員会はようやく応援の教師を送り込みましたが、受験を控えた三年生は、すでに勉強の遅れを取り戻すことは困難でした。  

 学校がある程度立ち直ったところで、私は、佐賀市教育委員会に対して、校長と有効な手を打たなかった佐賀市教育委員会事務局の担当課長(教員出身)を処分するように求めました。
 ところが、佐賀県教育委員会は猛反発です。市が県庁に何を楯突くかということです。しかし、学校崩壊といえば、企業倒産と同じです。子供たちの将来に大きな悪影響を与えたという意味で、はるかに責任重大なことです。

 私が記者会見までして強硬に申し入れた結果、校長は教育研修センターに送られ、課長も減給処分となりましたが、その校長は、一年後に佐賀県の西部地区のある中学校の校長に復活しています。これで子供たちに「責任感を持て」などと教えることができるでしょうか?

 振り返ってみると、行政改革で生み出した予算を優先的に教育に配分しましたが、県の教育委員会の厚い壁に阻まれて、教育内容を変えていくということにまではうまく手をつけることができませんでした。
 
 
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