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積水ハウス100周年を目指して (43)最近の“勝てば官軍”の風潮に警鐘を!| 愛する積水シリーズ
連載コラム
2008年6月13日 14:00

4~5日前の日曜日、今やオタクの町と化した東京秋葉原で、何の理由かわからないが、 無差別殺傷殺人事件が発生した。7人の死者が出た。近年、若者によるこの種の事件が増えている。

石原都知事がある学校を訪問したとき、校長から、これだけは守って欲しいといわれた。 それは「子供を叱らないでください。」ということだった。石原知事は「叱るという行為を欠いた教育が、この世にありうるだろうか。」と思ったそうだ。

40年前、東京オリンピックで大松監督率いる「東洋の魔女」と言われた、バレーボール日本代表チームが、宿敵ソ連チームを倒し、金メダルを取ったときの感動は日本国民なら忘れられないだろう。回転レシーブという、未曾有の過激な技を仕込んだ大松監督、それは美しかった。選手は、泣きながら、ふらふらになりながらの激しい練習だった。

その校長がおっしゃるのはよくわかるが、当節はなかなかあの頃のようには行かないと言う。スポーツ監督が選手に好かれる、教師が生徒に好かれる、親も子供に愛されようとする。このようなことは、その場しのぎの保身に過ぎないのではないのか。根本的に間違いを悟る必要があるのではないだろうか。生徒も叱れない教育の現場で、本質的教育者としての責務を忘れているとしか思えない。

動物行動学者のコンラート・ローレンツが言った。「幼い頃、肉体的苦痛(虐待ではない)を味わったことがない者は、長じて不幸な人間にしか成らない。」暑さ寒さを我慢する、つらい仕事で苦労することもある、その試練の堆積こそが正当な喜び、悲しみ、怒り、発奮をそなえた強い人間を育てるのだ。今、日本社会全体に子供達を普通に叱ることが出来なくなっているため、若者は行動倫理の判断が出来なく、すぐに不満が爆発し、ブレーキのない人間になってしまっているのだ。

日本社会の底流に黒い病根が渦巻いているのではないだろうか。政治も経済も会社の中も、勝てば官軍、勝てば何してもいい、という風潮がはびこっている。バブル崩壊後、市場原理主義が日本を覆っている。まるで催眠にかかったかのごとく、規制緩和の小さな政府、中央から地方へ、官から民へ、改革の嵐が吹きまくっている。

市場原理は自由競争と一体だから、結果、日本でも激しい競争社会に突入しているのである。弱肉強食の世界である。確率は半々と思うだろうが、一人の勝者に9人の敗者が普通である。アメリカの例を見ればわかる。1%の金持ちがアメリカの富、金を半分以上持っていることをみればわかる。一旦リストラに会うと、派遣社員などの不安定な職業にしか就けず、もう二度と浮き上がれない世界に入ってしまった。国も会社もこのような状況だから、モラルが下がるのは当然であろう。

積水ハウスの中でも、目先の聞く連中はいち早く勝ち組に取り入ろうと画策し、情実人事が横行。目立たず地道な人たちは、報われない組織に変貌しつつあるのではないだろうか。もし、このような風潮が少しでもあるのであれば、積水ハウスの社員の士気は相当落ちていると考えざるを得ないだろう。このことが、最近の経営数字の低迷と符合しているように思う。いずれはこの市場原理主義は共産主義同様敗北するだろう。積水ハウスは田鍋が唱えた「人間愛」を中心にすえ、会社と社員と工事店と運命協同体で、お客さんを大事に、共存共栄を図ることが一番重要だと思う。


野口孫子(敬称略)


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