■自治体の「再生」とは何でしょうか?
これまで、14回にわたって佐賀市役所での改革のことや、夕張のこと、首都圏の急速な高齢化のことなどをお話して来ました。6月26日の夕方から福岡のアクロスで「財政破綻を防ぐための体験的自治体経営論」というタイトルで、更に詳しくこれらのことをお話します。そして、サブタイトルは、『自治体の「再生」は可能か?希望の提言』となっています。
自治体の「再生」は可能か?
とても重いテーマですが、ここまで記事を読んでいただいた皆さんは、どのように思われますか?
そもそも、「自治体の再生」とは何でしょうか?間違いなく言えることは、高度成長期のようなに若者が多く、各地域に製造業があり、地元に小店があり、という時代には決して戻ることはないということです。
今は元気な福岡市都市圏に住む方には、自治体再生などと言ってもピンとこないとは思いますが、いずれは人口の減少と急速な高齢者数の増加が始まります。確実に、財政が厳しくなる中で、どのような未来を描くのか。そのためにどのような手を打っていくか、この構想力が問われていると思います。
もちろん、私にも、スパッとこの問題を斬ってみせる明快な答えがあるわけではありませんが、私が他の首長と違うところがあるとしたら、いつも、「人口構造の変化が、地域にどのような変化をもたらすか?」、「世界経済の変化が、地域の経済にどのような変化をもたらすか?」ということを考えていたことではないかと思います。
■自治体リーダーの経営力が勝敗を左右する
福岡市などの都市部と違って、佐賀市のような自治体はこれから大変に厳しいことになりますが、今の豊かさを次の世代に伝えるための策が全く無いわけではありませんでした。
その基本は、どの自治体にも共通していて、
1.急いで行革を行い、地域経済を活発にするための投資を行う財源を作る。
2.財源の目途が立てば、地域経済を活発にするための投資や、教育・子育て支援についての投資を重点的に行う。
3.人材の確保のために、教育に力を入れ、都市部からの人材還流策を講じる。
4.弱者は、一点突破の重点投資をする。
しかし、策があるとは言っても、それは非常に細い道です。今の世代は、一時期は苦労する道ですが、飛躍するためには一旦膝をかがめて沈み込むことも必要です。このことで思うのは、リーダーの経営力が勝敗を決するということです。
自治体のコストダウンで大きな効果を上げるのは、部下の日ごろの節電ではなく、大きな枠組みを変えるようなトップダウンの取り組みであり、どの分野に重点投資するかということも、大きな方向性を決めるリーダーの判断が勝敗の分かれ目となります。これから日本は全くどこにもお手本の無い高齢社会に突入しますので、部下が策を練ったといっても、はっきりと先が見える案などまず無いでしょうから。
■企業人こそ、政治の世界へ!
太平洋戦争は、経済力に格段の差があったので、そもそも勝ち目が無かったという人は多いのですが、私は笑ってしまいます。古今東西、圧倒的に戦力が少なかった側が勝った戦いはいくつもあります。
日露戦争はどうだったでしょうか。圧倒的にロシアの経済力、軍事力が優れており、先の見えない戦いでしたが、日本はギリギリで勝ちました。この二つの戦争を比較すると、どちらも国力の限りを尽くした戦争ではありますが、太平洋戦争の最大の敗因は、経済力の差ではなく、戦争目的がはっきりせず、そのために、あらゆる対策が点でバラバラになったこと、要するに指導者の力量の違いにあると私は思っています。同様に、自治体のトップにも「経営力」が求められていると思います。
この記事を読んでいただいているのは経済界の方が多いと思いますので、連載の最後に一つ皆さんにお願いを申し上げさせていただきます。日本では、自治体のトップになる人は、経営の経験を積むことがないままにトップになることが多いのですが、これから時代が益々不透明になって来ますので、潰れかかった会社の再建を成し遂げたとか、ベンチャービジネスで大成功したといった経験のある修羅場をくぐった人が、是非、首長や地方議員に立候補していただきたいと願っています(あまり公共事業に関係のなかった人が良いですが)。
ホリエモンや村上ファンドの村上さんの悪口を言う人は多いですが、「では、あなたは、世の中のために何をするの?」と問いかけてみたい気になります。
引退後も財界活動も良いですし、ライオンズやロータリーの活動も良いとは思いますが、最後のご奉公で、地元で泥にまみれるのも良い生き方ではないでしょうか。
では、15回にわたりお読みいただき、誠に有難うございました。またどこかでお会いできれば、幸いです。(終)
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