国交省、ようやく法改正の影響を認める
今回の法改正で影響を受けたのは、ゼネコンや設計事務所、マンションデベロッパーだけでない。鉄骨系プレハブ住宅メーカーを中心に、影響が少ないと思われていた木造住宅も建築確認交付件数が大きく落ちた。
こうした状況をうけ、昨年9月28日における国交省の新設住宅着工戸数の発表資料の冒頭で、7月の住宅着工戸数を発表したときと同様に、減少したのは法改正の影響と説明した。さらに、7月の資料に記されていた「影響は一時的」というただし書きがなくなるなど、同省も法改正による影響を否定しなくなった。
同11月6日には、社団法人日本建築士事務所協会(日事連)における「改正建築基準法に関する公明党国土交通部会」の配布資料において、国交省は「6月20日の改正建築基準法の施行後、設計側・審査側双方とも、改正内容に習熟していないことから、たとえば(1)単純な誤字、脱字程度しか訂正が認められないとの誤解による申請の手控え、(2)本来訂正させる必要のない些細な事項についてまで補正作業を求めている、(3)設計側・審査側双方とも構造基準の見直しの内容についての理解が進んでいない、等の運用面の問題により、建築確認手続が遅延し、建築着工が大幅に減少している状況」を認めている。
ただし、この資料では「設計側・審査側双方とも」に理解不足の責任があったかのような記述だ。しかしそもそも、本来ならば法施行の数カ月前には現場に行き渡っているべきものであるはずの、法改正の詳細を説明した技術解説書の発刊が、法施行より2カ月も遅れてしまった。これが現場の混乱を引き起こした最大要因となった。現場の人々の理解が追いつかなかったのも当然の状況であった。
こうした状況にさらに拍車をかけてしまったのが、大臣認定プログラムの構造計算ソフトの未完成だった。この肝心要のプログラムが、施行から4カ月経っても認定すらされていなかった。国交省は当時、「認定プログラムの出荷時期は未定」とし、いかに見切り発車の法改正だったかが、こうしたところからも見受けられた。
つづく
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