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【行政コラム】改革派前市長による希望の提言(11) 木下敏之前佐賀市長
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2008年6月17日 18:40

私の見た夕張

■医療法人夕張希望の杜

 2005年10月の佐賀市長選挙で敗れてから、横浜市の中田市長からスカウトの声がかかりました。これまでの四人いる副市長の一人という存在から、中田市長を大統領とすれば、私が首相的な存在で内政を細かくリードしていこうという、日本初の構想でしたが、ある事件の影響で議会との力関係に変化が生じ、その構想は止まりました。

 その後、私は東京を活動の拠点として、ベンチャービジネスの傍ら、全国各地で講演しています。そして、昨年の10月に、不思議なご縁で、夕張市にある夕張市立総合病院の経営を引き継いだ「医療法人財団夕張希望の杜」の経営を、メールマガジンを発行するという形で応援をしています。

 今回は、この病院の取り組みは詳しくお話はしませんが、地方で医師集めに苦労している地域には貴重な情報の宝庫です。
 趣旨こちら⇒[ http://www.kinoshita-toshiyuki.net/newsletter.html ]

 そういったこともあって、夕張市の人と話す機会もあり、夕張市の財政破たんについて調べて見たところ、そこにはどこの市町村にも共通する教訓がありました。それは、人口の減少に応じて市民サービスの削減や職員人件費の削減をしないと、財政はどんどん悪化するという単純な教訓でした。

■急減する人口

 夕張市の人口のピークは1960年4月30日の11万6908人で、2007年12月末の1万2198人までの47年間に、10万5千人の人口が減っています。

 1960 116,908
 1970  69,871
 1980  41,715
 1990  20,969
 2000  14,791
 2007  12,198

 炭鉱が次々に閉鎖され、それに変わる企業誘致もうまく進まず、人口が急激に流出したのです。
 
■財政破たんの原因は何か

 財政破たんの原因は、国の石炭政策の廃止に翻弄された結果だという人もいれば、放漫な観光投資が原因だと言う人もいます。夕張市の産業別就業者に占める炭鉱従事者の割合を見てみると以下のように急減しています。

        鉱業関係就業者   全就業者数    割合
 1970年     11,456     28,511   40.2%
 1980年      6,766     18,428   36.8%
 1990年        104      8,604    1.2%
 2000年          7      6,402    0.1%

 夕張市役所は炭鉱以外の産業に活路を見出そうとしました。最初は企業誘致ですが、うまくいきません。そのうちに、観光施設「石炭の歴史村」と遊園地が1980年代前半にオープンすると、50万人を超える観光客を集めました。

 それに伴って、市役所の観光への投資が活発化し、観光客が押し寄せるようになり、1990年代後半になっても200万人の人が来ていたのです。バブル経済の崩壊以降も、平成10年、11年ごろまではまだ踏ん張っていたのです。これだけの人を集めることができたのだから、表面上はうまく言っているように見えたのも無理がないと思います。

■夕張市役所が財政破綻したもう一つの原因

 財政関係のデータを見ると、観光産業以外に別のところに破産した大きな原因があるということがわかります。平成18年6月に北海道庁が発表した「夕張市の財政運営に関する調査(中間報告)」によると、夕張市役所の債務の状況を、合計632億円としています。

 その内訳は、観光関連債務は、第三セクター分も含めて168億円。観光以外の分野の債務は合計464億円で、観光分野の赤字の三倍近い額となっています。その内訳は、一般会計分270億円、住宅管理事業53億円、病院事業関連31億円、上水道事業関連24億円、下水道事業関連22億円です。

 要するに、市役所の財政が悪化し、人口も減少してきたにもかかわらず、職員数を大幅に削減することも、各種の行政サービスを急いで廃止縮小することも、きちんと行わなかったために、住宅、病院などさまざまなところで赤字が蓄積していったのです。

 北海道庁の分析で「歳入の減少に対応したサービス水準の見直しや人口の激減に対応すべき組織のスリム化も大きく立ち遅れ、総人件費の抑制も不十分であった。」と言っているのはこのことでした。

         公務関係就業者  全就業者数    割合
 1970年      963       28,511    3.4%
 1980年      684       18,428    3.7%
 1990年      547        8,604    6.7%
 2000年      409        6,402    6.2%

 2000年時点での人口は約15,000人ですが、このクラスの人口ですと、多くても役場職員は200人で十分です。実際の職員は409名。200人多ければ、年間15~6億円が、本来払う必要のないお金です。

 また、一般会計の赤字分が負債のかなりの部分を占めるということは、住民も住宅の管理や上下水道、病院などで、本来は受けられないサービスを長い間受けることができたという形で、財政破綻の一因を負っているのです。

 このことは今の日本全体にもそのまま当てはまります。収入を上回る支出を行って、我々は各種の行政サービスを受けています。その差は借金で埋めています。政府と地方自治体あわせて1000兆円を超えます。本来なら、とっくに縮小していなくてはならない行政サービスや、もっと削減しないといけない公務員を抱えているので、どんどん借金が積み上がっているのです。そして、その借金は、重い負担として次世代にのしかかってきます。

■総務省から経営のうまさでは日本一といわれていた夕張市長
 
 笑い話のようでうすが、亡くなられた中田 元市長は、当時の自治省の財政局長から「全国651市の市長のうち、経営のうまさでは日本一」といわれていたそうでした。それだけでなく、平成元年度に「活力のあるまちづくり自治大臣表彰」を夕張市は受賞しています。本当に、総務省はいい加減なものです。
 次回は、まだまだ行政コストは削減できるというお話をしたいと思います。
 
 
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