▼▽ 本日の記事・目次 ▽▼
▼01 特養2年間で死亡事故10件! ~なぜ起きる介護事故~
「事故報告書」に見る介護崩壊
▼02こども病院人工島移転再考
その5 「代替できること」と「代替できないこと」
▼01 特養2年間で死亡事故10件!
~なぜ起きる介護事故~
「事故報告書」に見る介護崩壊
特別養護老人ホームで起きた溺水事故について検証を進めたい。この事故は、事故報告書にあるとおり、入浴中に溺水、自発呼吸も止まりチアノーゼが出る状態までいきながら、その後の特養職員の対応によって一命を取り留めている。
「職員2人にて浴槽外へ引き上げタッピング施工。」(タッピングとは痰などを出しやすくするため背中や腹を叩くことである。)「口腔内より水を吐き出され咳を1回され、自発呼吸+。その後も水を吐き出させる。」とある。自発呼吸が始まり、チアノーゼが改善した後、救急車で搬送されている。ただし、報告書の「傷病等の内容」には「溺水により、肺炎」と記されており、一命は取り留めたものの、救急搬送後、肺炎を起こして入院したことが分かる。84歳で要介護度4のお年寄りにとっては、過酷な状態になっていたということである。
報告書の後半部分「再発防止のための方策」欄には「利用者入浴中は、必ず職員の視野に入れておき、側を離れる場合は他の職員に声をかけて注意を払う。入浴物品の検討。利用者個々の状態にあった湯の量にする。」とある。この事故が起きた時、
(1)入所者から職員が目を離していた。
(2)入所者の状態に合った湯の量ではなかった。
ということに他ならない。こうした施設に、安心して入所を決められるか、疑問である。
それにしても再発防止はこれだけで達成されるのだろうか。もっと他にも改善されるべきものが存在すると思われるのだが・・・。
「事故報告書」が介護事故の現状を語る。市民には、これら事故を知る権利があるはず・・・。
事故報告書には過失の有無について「有」に丸印が付けられており、施設側がきちんと責任を認めていることだけが救いである。しかし、なぜこのような事故が起きてしまうのだろう。そして、どの程度の頻度でこうした事故が起きているのか・・・。
2年間で死亡事故10件、福岡市公表せず!
実は事故報告書によって確認すると、福岡市内の特別養護老人ホームに限っていえば、平成18年4月から20年3月初旬までの間に、特養側に過失があると認められる重大事故は15件、そのうち死亡に至った事故が10件起きていた。
先述してきたストレッチャーからの転落・死亡事故や、入浴中の溺水事故もこの中に含まれていた事案である。しかし、福岡市民にはこうした重大事故について全く公表されていない。保険者である福岡市が、こうした人命にかかわる介護事故を公表しないことは、被保険者(市民)に対する裏切り行為ではないだろうか。
介護保険制度は被保険者である市民と、介護施設側の信頼関係の上に成り立っている。
施設側に過失があるとされる重大事故、特に死亡に至ったケースが公表されないということは、そうした重要情報を知らずに入所する市民に多大な不利益をもたらす。また、制度の趣旨でもある入所予定者やその家族が「サービスを選択する」うえで、処遇の良し悪しを判断する大切な材料を知らされないことになる。
これでは、なんのための「事故報告書」なのか分からない。国が決めたことだから出させるというのではあまりに無責任だろう。公表されない重大事故についてさらに検証してみたい。
(つづく)
▼02 こども病院人工島移転再考
その5 「代替できること」と「代替できないこと」
「こども病院は生活の一部」である「こどもたち」にとって、病院までの「時間が増加する」ということは、生活していくうえで重大な影響を持つ。再び「こども病院の人工島移転を考える会」の代表・佐野さんの言葉を聞こう。
「こども達の発育と学校は切り離して考えられないじゃないですか。できるだけ多くの時間、学校に通わせてやりたい。勉強だけではなく、学校生活そのものの経験もさせてやりたいではないですか。普通の生活をさせてあげたいというのが親の望みなのに、ただでさえ少ない学校生活の時間が人工島への移転によって削られようとしています。『しわよせ』は全てこども達に行ってしまうんです。」
留守家庭子ども会の無料化・時間延長を巡る論議のときも書いたことだが、他ならぬ「こども目線」を外して、議論をすすめたとて、幸せな結論は得られまい。
留守家庭子ども会の無料化は、「日本一こどもを育てやすい街・福岡」にするべく市長が打ち出した施策だったが、働くお母さんのことのみを考える完全な「大人目線」だった。しかし「こども目線」にたてば、この施策だと、こども達にとって大切なお母さんとの貴重な時間が削られかねないのだ。そういう「しわよせ」について顧慮されることもなかったように思う。
こども病院に関していえば、広い病院、快適な環境、そして、収支の安定などの「大人目線」も大事なことは百も承知だが、移転してしまうことで、こども達の生活スタイルが一変してしまうことに注意は払われているだろうか。
親も含めた利用者にとっても、こども病院が広い、快適であることにこしたことはないはずだ。しかし、それらの要素は「緊急対応性」や「こども達の生活」には「代替できぬもの」であることを理解しないで、病院の移転や形態が決まっていいはずがない。
こども病院に関する非代替的な要素があるからこそ、利用者は、知恵を使い、涙ぐましい工夫をしながら、今のこども病院を使っているのである。
(つづく)
日下部晃志
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