国交省の認識の甘さ、事はもはや「温かい目」で静観できず
多くの建設関連業者が憂慮していた通り、昨年10月の全国における倒産のなかで、建設業者は2005年3月以来となる300件超えとなった。同年9月はおよそ200件、一昨年の10月ではおよそ240件であったから、対前月比で約50%増、対前年比で約30%となり、その増加分の多くが改正建築基準法の影響と見られるものであった。
こうした状況を受けて、ようやく国交省も、11月14日に建築基準法施行規則の一部改正を行なった。その主な改正点は以下の通り。
(1)確認申請時の認定書の写しの提出については、建築主事等が求める場合に限る
(2)図面の記載内容の変更時には、建築基準関係規定に関係のない図面上の変更については、確認手続きは必要ない
(3)間仕切りや開口部の変更で構造安全性、防火・避難性能が低下することがないものについては、計画変更の確認手続きが不要な「軽微な変更」として扱う
(4)「軽微な変更」については、中間検査や完了検査の申請に、変更の内容を説明することになるが、検査前の適当な時期に建築主事などにあらかじめ説明しておくことも考えられる。
さらに、特別相談窓口の設置やセーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の適用および融資条件の優遇化、既往債務の返済条件緩和の対応など、法の整備も進みつつあった。しかし、ある建材メーカーは、「当社のような住宅の仕上げに関わる部分の業種は、今はまだ良いですが、08年2~3月頃に影響が出てくると予想されます」と懸念を示していた。
昨年12月4日、冬柴鉄三・国土交通大臣は閣議後の会見で、新設住宅着工戸数の大幅減少に触れ、「建築基準法と建築士法の大改正を行なった。通常に戻るまで若干の時間がほしい。温かい目で見守ってほしい」と述べている。
しかしこの段階では、事はもはや「温かい目」で静観していられるような状況ではなかった。着工数や確認件数という指標のみでは到底、先が予測できない状況で、法の整備だけでは追いつかないほど、広く深く法改正の影響は出ていた。
一方で、遠藤孝・一級建築士による駆け込み確認申請による構造計算偽装や、ニチアス、東洋ゴム工業などの建材メーカーによる大臣認定不正取得問題が発覚するなどの事件も起きてしまった。こうして法改正の影響が、建設業以外の様々な業種における倒産や偽装というかたちで表れ、さらには国民経済へ波及することになっていった。
つづく
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