沖縄県議選で自民・公明の与党が大敗し、与野党の勢力が逆転した。昨年の参院選から続く政権交代のうねりが現在も続き、地方に確実に広がっていることをはっきり示した。福田首相も自民党も、これではなおさら怖くて解散・総選挙はできない。だが、その折も折、福田政権を支える自民党最大派閥の町村派(清和政策研究会)で”お家騒動”が勃発した。同派の代表世話人の1人、中川秀直・元幹事長が派内に勉強会を旗揚げしたことに、派閥のオーナーである名誉会長の森喜朗・元首相が6月5日の総会で「福田首相の足を引っ張るようなことはやめろ」と激怒したのである。
この8年間で森ー小泉ー安倍ー福田と連続4人の首相を輩出し、”わが世の春”を謳歌してきた総裁派閥に大きな亀裂が入った瞬間だった。この動きはただの派内クーデターにはとどまりそうにはない。
◆中川は”第2の小沢”か--15年前の自民分裂との相似
「自民党が下野した15年前の悪夢を思い出す」
そう語るのは自民党の長老議員だ。
15年前、東京佐川急便ヤミ献金事件をきっかけに最大派閥の竹下派が大分裂。小沢一郎氏のグループが宮沢内閣への不信任案に同調して党を飛び出し、自民党は総選挙敗北で下野に追い込まれ、細川連立内閣が誕生した。あの時に似てきたというのである。
とはいえ、国会の状況は当時とはかなり違う。参院は与野党が逆転しているものの、衆院では与党が圧倒的多数を持ち、少しくらいの造反や分裂では不信任案は通らない。
たとえ野党が参院で首相問責決議を可決しても、衆院の内閣不信任と違って解散か総選挙を選ばなければならないという規定はなく、福田首相は”黙殺”する構えなのだ。そうなると、野党にとって問責は”切り札”どころか空砲に終わる可能性が強い。
総理大臣の権力は、土俵際に追い詰められてから粘りがきく。
「いや、福田さんも自民党執行部も本音は問責が怖い。問責されたら秋の臨時国会はすべての法案を衆院の3分の2で再可決するしかないが、与党の足並みが乱れて再議決に失敗すれば、内閣総辞職に追い込まれる。15年前は小沢が生き残るために小選挙区制度導入を大義名分に党内を”改革派”と”守旧派”に割った。今は増税論争が大きな火種だ。党内には社会保障財源確保のために消費税増税論が高まっており、中川は増税反対を唱え、確信犯で党内対立を仕掛けようとしている。だから危うい。森さんも中川の意図に驚いて、”政局にする気か”と怒ったんだ」(先の長老)
事実、霞ヶ関改革による歳出削減優先を掲げる中川氏は、増税か、反増税かの路線対立が「政界再編の軸になる」と、自民分裂まで視野に入れたような言い方をしている。
なぜ、わざわざ”平地に乱”を起こそうとしているのか。