01●なぜ起きる介護事故 事故報告書に見る介護崩壊
~おざなりの事故報告~
02●給食パン持ち帰り禁止をめぐって文科省の曖昧さに疑問
~報道で議論の大切さ証明~
01●なぜ起きる介護事故 事故報告書に見る介護崩壊
~おざなりの事故報告~
ストレッチャーからの転落・死亡、溺水の2件の介護事故に続き、パーキンソン病を発症していた入所者の死亡事故について検証する。
早良区内の特別養護老人ホームで起きたこの事故の報告書は、記載内容が不十分で、事件性を疑っていいのかどうかさえ判然としない。この程度の報告書で市役所側が納得したとすれば、怠慢のそしりは免れまい。
なにが不十分か、詳しく見てみよう。
特養側は、パーキンソン病の入所者には、当然その動作に不自由があることを認識していたものと思われる。
事故報告書の事故の<原因>には、「パーキンソン病の薬が切れて、体が自由に動かなかったと思われる。」と記されている。まず、不思議に思うのは、パーキンソン病という難病を抱える入居者であるにもかかわらず、薬が切れているかどうかの確認さえしていなかったのかということである。
◆抜け落ちた重要情報 パーキンソン病・病状不明
この報告書は事故当日の12月29日の日付になっているが、市側の受付は6日後の1月4日である。報告書に「薬が切れて・・・」という記述があるからには、施設側は入所者がパーキンソン病で投薬を受ける状態であることを把握していたことになる。
しかし、先述したようにパーキンソン病はその重症度を5段階に分類している。ステージ5になると自力での日常生活は不可能とされるが、亡くなられた入所者がどの程度の症状であったのか記されていない。薬が切れて身体が自由に動かないということは、少なくとも初期の症状ではなかったと思われるのである。ステージ1や2の段階では生活に不便があっても、体がほとんど動かないということはないとされるからである。
報告書からは、パーキンソン病がどの程度まで進行していたかという重要な情報が抜け落ちており、一読しただけではパーキンソン病のため起きた事故であるかあるかどうか判断を下しにくい。市役所側が、この程度の報告書で納得すること自体、不可解である。念のためこのケースについて事情を聞いたり、調査をしたという公文書の存在を確認したが、なにもないという。
◆行政の対応不十分
実は問題はそこに存在する。市役所側は本件だけでなく、どの報告書についても、事実関係解明のための立ち入り調査や、関係者の聴取などを行っていないケースが大半であるという。
市監査指導課に確認したところ、ケースバイケースとしながらも、報告書が提出されても事故原因の究明には当たらず、エスカレーター式に県庁に報告書を流すだけなのだという。
これでは、なんのための事故報告書なのか分からない。
02●給食パン持ち帰り禁止をめぐって文科省の曖昧さに疑問
~報道で議論の大切さ証明~
先月、MAX市政ニュースは、福岡市教育委員会が出した給食パンの持ち帰り禁止通知について、「食育」と逆行するのではないかとの問題提起をおこなった。同時に、持ち帰り禁止について、是か非かの議論をすることの重要性にも言及していた。
市教委が市内各小学校に出した通知をもう一度ご覧いただきたい。
【参考】として記載されているのは平成9年に文部科学書が制定した「学校給食衛生管理の基準」である。Ⅹ-3-アには、「児童生徒に対して、パン等の残食の持ち帰りは、衛生上の見地から禁止することが望ましい。」と記されている。
O-157が社会問題化したことから制定された「基準」とされ、この基準以降、全国の小・中学校で給食パンの持ち帰り禁止が一気に進んだとされる。市教委・健康教育課も、この「基準」を持ち帰り禁止の根拠にあげ、学校ごとに対応が分かれていたものを統一するために「通知」を出したとしていた。それにしても、根拠にするにしてはずいぶん曖昧な言い回しである。
◆文科省の言い分、「あくまで『望ましい』」
本社取材班はその後、文部科学省の担当部局である学校健康教育課に話を聞いた。担当職員によれば、「基準」に記されているように、パン等の持ち帰り禁止は、あくまでも「望ましい」となっている。給食の実施主体は教育委員会や学校であり、持ち帰りの可否については地域の実情などに応じてそれぞれが決めるものだとする。
(責任は国にはない)、と言っているように聞こえるのは記者だけだろうか。これでは、今までの全国での取り組みは何だったのかということになりかねない。文科省には、今回の問題を一過性のローカル報道と捉えず、「食育」について考える契機としてもらいたい。
◆報道を機に残食減る傾向も
当社の報道はもちろん、地元紙も2日間にわたってこの問題を報じたことで、パンの持ち帰り禁止について様々な議論が巻き起こったとされる。市議会でも質問が出るなど、社会的にも注目を集めたのは事実である。そのせいか、給食の現場では、パンの残食が減る傾向も見られるという。議論を契機に現場の先生たちの給食指導にも変化があったということらしい。しかし、パンの持ち帰り禁止は、こと「食育」の観点からすると、やはり逆行しているのではないだろうか。
平成17年には「食育基本法」という法律まで施行されている。この法律の立法趣旨とは明らかに矛盾するのである。パンの持ち帰り禁止の問題は、市教委というより、国の方針の曖昧さに原因があるようだ。
◆新たな課題も
ところで、パンの持ち帰りの是非という問題は、さらに別の課題も浮き彫りにしているという。なぜ膨大な量の残食が出てしまうのかという問題である。子ども達にとって必要な量やカロリーがきちんと計算されているにもかかわらず、多くの食材が残飯=ゴミとなっているのである。食が細くなったということだけで済まされる問題ではないという。稿を改めて検証してみたい。
━ PR ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ MAXふくおか市政Newsのご意見・ご感想を下記のメール受け付け。
https://www.data-max.co.jp/toi.htm
◇ 配信不要の方は、「市政ニュース不要」とご記入の上、下記アドレス
まで送信下さい。
media@data-max.co.jp
◇ MAXふくおか市政Newsは、ブレインメールのシステムで配信しています。
http://www.blaynmail.jp/news/topics/20070301.html
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
毎日更新(土・日・祝日を除く)で必読の新鮮な情報が目白押し!
福岡の企業情報サイトデータ・マックス『ネットIB』https://www.data-max.co.jp/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※記事へのご意見はこちら