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社長らの再任が否決 アデランス・ショック(上) | 東京レポート
特別取材
2008年6月23日 09:26

 アデランス・ショックが経済界を襲った。アデランスホールディングス(HD)が5月29日に開いた株主総会で、岡本孝善社長(58)ら取締役7人の再任案が否決される異例の事態となった。業績悪化を理由に経営陣交代を求めていた、米投資ファンドのスティール・パートナーズの主張に外国人株主が同調し、多数派を形成したことによる。その背景には、外国人株主の比率が高く、安定株主の比率が低い、というアデランス特有の株主構成があった。

外国人株主比率は49.9%

 今回の経営陣不信任という総会決議をみて、日本の企業は「外国人株主が多いと危険」と判断し、安定株主を形成するために株式の持ち合いが加速するものと見られる。それほどのショックをもたらした。
 アデランスの2月末の株主構成は、筆頭株主のスティール・パートナーズ(議決権約29%)を含め、外国人株主が49.9%を占める。金融機関が13.9%、国内法人7.3%。金融機関の上位株主はほとんどが信託口で、実体は機関投資家だ。持ち合い相手となりうる日本の事業法人の比率は10%にも満たない。個人その他は21.2%だが、創業者の根本信男氏(9.2%)など経営陣が12.6%を保有しており、浮動株は8.6%である。
 議決権を行使した株主は全体の約85%で、外国人株主だけで有効議決の過半数を超える水準だ。それに対して、安定株主とみられる株主の比率は極めて低い。経営陣の再任があっさり否決された要因である。
 勝負を決めたのは海外勢だった。アデランスの外国人株主の持ち株比率49.9%は、グローバル企業のソニー(52.6%)に匹敵する高さだ。なぜ、アデランスに外国人株主が多いのか。そこには、海外での積極的なIR(投資家向け広報)活動があった。
 アデランスは1968年、女性かつらのボア・シャポーの支店長だった根本信男(67、現・取締役最高顧問)、平川邦彦(72、元・取締役最高顧問)、大北春男(66、現・取締役最高顧問)の3氏が、東京・新宿で男性用かつら専門店を創業したのが始まり。
 アデランスはフランス語の「くっついている」という意味。それまでの「かぶる」から、「つける」かつらという意味が込められている。テレビコマーシャルで抜群の知名度を誇り、男性用かつらの代名詞になった。
 根本氏、大北氏と2代続いた創業者たちの後を継いで、95年に社長に就任したのが岡本孝善氏。東京都理容学校を卒業後、理容師を経て、かつらのヘアスタイルを作る技術職として入社した。リーダーシップを買われ46歳で社長に抜擢され、以来、13年間トップの座にある。
 その岡本氏が海外でのIR活動に力を入れたのは、銀行との持ち合い解消が進み、機関投資家に銀行の放出分を吸収してもらうためだった。また、団塊世代が定年を迎えるため、主力の男性用かつら市場の縮小が避けられず、海外に活路を求める狙いもあった。
 「なぜ、かつら会社が上場できるのか」。2000年から始めた欧米でのIRの場では、このような質問が相次いだ。海外でかつら会社と言えば、家族経営が一般的で、海外の投資家にはなかなか理解してもらえなかったためだ。
 それでも海外IRの効果で、外国人の持ち株比率が上昇。03年8月までは20%前後にとどまっていたが、05年2月期には41.6%と4割を超えた。同年11月、12.15%を保有する筆頭株主に躍り出たのがスティールである。

つづく


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