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社長らの再任が否決 アデランス・ショック(下) | 東京レポート
特別取材
2008年6月24日 09:27

スティールが戦術転換

 スティールは、昨年の株主総会では台風の目だった。株主提案を乱発し、会社との対決姿勢を打ち出した。しかし、スティールの要求は他の株主に受け入れられず、全社において敗北した。
 その反省から、スティールは戦術を「攻め」から「待ち」に転換。アデランスなど9社に自社株買いや増配を求める提言書を送って対話を求める一方、他の株主には賛同を求めていた。アデランスに対しては、業績不振を理由に岡本社長の交代を求める考えを提言していた。しかし、役員選任に関する株主提案も委任状争奪戦も見送り、昨年のような対決を避けた。実際、スティールは株主総会に代理人も送り込んでいなかったのだ。
 こうしたスティールの戦術転換に、アデランス側は楽観視していた節がある。昨年の株主総会では、買収防衛策導入をめぐりスティールと対決。委任状争奪戦に発展し、岡本社長自ら機関投資家をまわって支持を取り付けた。防衛策は賛成多数で承認された。昨年勝ったことで、外国人株主も経営陣につくという自信をもたらした。
 今回、外国人投資家に強い影響力を持つ議決権行使助言会社、米インステューショナル・シェアホルダー・サービシーズが役員選任議案への賛同を推奨していた。そのため、岡本社長は昨年のように機関投資家をまわることはなかった。役員選任は賛成多数で議決されると踏んでいたのだ。そこに、アデランスが票読みを誤った原因の一端がある。

株主持ち合いが強まる

 アデランスの経営陣の再任に「ノー」を突きつけたのは、昨年の総会で経営陣を支持した外国人株主たちであった。業績は昨年と様変わりした。同社の08年2月期の連結売上高749億円に対して、当期純利益は対前期比90.3%減の5億9,000万円。しかも、株価はこの1年で2割下落。外国人株主は経営陣に見切りをつけたわけだ。
 スティールなど投資ファンドが、総会で対決姿勢を打ち出すと乗っ取り屋のイメージがつくので、機関投資家は加担しにくい。しかし、株価を引き上げる企業価値向上の目標を共有しようと訴える方法なら、機関投資家は賛同しやすくなる。スティールの主張に、ROE(株主資本利益率)など経営効率を求める外国人株主が同調した。昨年の株主総会で全敗した学習効果で、「待ち」の姿勢に転じたスティールの戦術転換が功を奏したといえる。
 これまで事件ごとに、日本企業の株主対策は変容してきた。ニッポン放送の乗っ取りを仕掛けたライブドア事件を機に、企業は買収防衛策を導入。最高裁が、スティールによるブルドックソースの買収防衛策の差し止め請求を却下したことをきっかけに、企業の安定株主志向が拡大した。
 今回、アデランスで取締役選任案の否決という劇的な展開になったのは、外国人株主の比率が高く、安定株主の比率が低いという株主構成にあった。今後、「外国人株主が多ければ危険」として、日本企業が安定株主の形成に向けて株式の持ち合いを強めるのは間違いないだろう。スティールの勝利は、スティールの意に反して、買収防衛策の強化という皮肉な結果をもたらすことになる。


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