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【行政コラム】改革派前市長による希望の提言(8) 木下敏之前佐賀市長
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2008年6月12日 14:41

中心市街地の活性化対策

■佐賀市の最大の組織体は佐賀大学? 

 市長就任後、バブル的な事業の見直し、行政改革、人口減少の時代にあった各種計画の見直しなどに優先して取り組んできましたが、予想以上の進展があったので、3年目から少しずつ産業振興に取り組み始めました。

 なにせ、佐賀市には大きな企業がありません。今回は、建設業と同様に地域経済を支えていた小売店と卸業者対策の一つでもある「中心市街地活性化」対策について取り組んだことを書きます。

 結論からいうと、10年、20年という長期的な取り組みが必要にもかかわらず、私の落選によって重要な柱がいくつも崩れてしまい、復活は益々厳しい状況となりました。

■中心市街地が衰退すると何が困るか?

 佐賀市の中心市街地も多くの地方都市と同様に大変さびしい状態です。中心商店街の歩行者数は平成4年ころから急減少していますが、中心市街地が衰退すると、まず、その地域の個性がなくなり、外から見るとまったく魅力のない町になってしまいます。

 地域の個性はその町の歴史に基づくのですが、そのベースとなるものは江戸時代の殿様の活動に基づくものや、その地域の大店や老舗の人たちがベースになる祭りや風習です。全国どこにでもあるような街ならば、観光に来る人もいませんし、その町で生まれた子供たちがそこに住み続けたいと思う気持ちも強くはないでしょう。

 また、地域を支える産業であった小売業と卸売業が衰退すると、佐賀市の富が流出し、地域内で循環しなくなります。年を追うごとに福岡へ買い物に出かける人が増えていました。日銀の佐賀市出張所長とお話していると、現金ベースで明らかに佐賀市から福岡市にお金が流出しており、その傾向が拡大していると心配顔で話されていました。
 
■衰退の原因は大規模店舗の進出ではありません

 衰退の理由はいくつかありますが、まず、街の中心に固まっていた公共施設が、郊外に分散して立地してしまったことが一つです。昔は、公的な施設が中心部に固まっていました。佐賀城のお堀周辺に県庁、図書館、高校、国の機関、市役所、市民ホール、県立病院、佐賀神社、九州電力などの有力企業のオフィスが固まっていました。

 しかし、その後、多くの施設が分散してしまいました。昔は、ヨーロッパの都市のように公的施設が町の中に固まっていたのですが、それを人為的に分散してしまったのです。
 
 そこで、拡散した市街地をもう一回コンパクトにしよう考えました。都市計画を変更して、公的施設や市営住宅などは中心部に再集結する方向に変えました。何十年という時間はかかりますが、もう一度都市の核を作ろうとしました。

 中心市街地の活性化のためには、そこで働く人を増やす、住む人を増やす、遊びに来る人を増やすということを同時に進めていかねばなりません。そのためにも、影響力の大きい公的施設をこれ以上外に出さないだけでなく、すでに出て行ってしまった施設についても時間をかけて町の中心に戻そうと考えたのです。

 しかし、最近、この柱は崩れてしまいました。郊外の開発規制をかけていない町と合併してしまったそうです。市民の選択ですので、しかたありませんが、残念です。また、中心商店街の人たちも、多くが郊外に家を建てて住むようになりました。店に通勤してくるわけです。これでは、遅くまで店を開けていることも困難です。商売をやめても、空いている店を他の人に安く貸そうという人もあまりいません。何年も完全な空き家のままの家もいくつもありました。商店街の有志が店を開けてください、誰かに貸して下さいと頼んでも、なかなか協力もしてもらえません。

 中心商店街が衰退したのは大規模店舗の進出が原因だという人がいます。確かに、安い商品を提供しています。しかし、それ以上に問題なのは、商店街の多くの人に共通する努力不足ということがあると思います。これは、現職首長は言いにくいことでしょうね。

■遊びに来る人を増やす。・・・神社仏閣を生かしたイベントの開催

 考えた対策の二つ目ですが、中心市街地で四季折々にイベントをするということを実行しました。ともかく人が来ないことにはどうしようもないので、イベントで人を集めようということです。市内には格式のあるお寺や神社が多数あります。えびす像も400体以上あります。この雰囲気を生かすことを考えました。

 例えば、佐賀城下ひな祭りです。別々の場所で開催されていた、地元の人形作家の方が自分で行われていた雛人形の個展と、佐賀藩主だった鍋島家のお雛様の展示を組み合わせて、イベントにしたのです。ともかく物語が作りあげられれば、後はマスコミの協力を得て、佐賀でも観光客を集めることができることを、佐賀には何もないと思っている市民に見せようと思ったのです。

 最初は商店街は冷ややかでしたが、一年目からかなりのお客様が来ました。九州では有名な日田のおひな祭りを見に行きましたが、人形自体はだいぶ痛んでいて、佐賀のほうがずっと優れています。お雛人形のレベルが全く違うのです。

 それに加えて、福岡のテレビ局が随分協力してくれました。テレビ局の社長さんを尋ねて、地域振興のためのイベントなので是非、テレビで取り上げていただきたいとお願いしたのです。観光のPRに市長が来ることは今まで全くなかったそうで、その努力を買っていただいたのか、結構テレビで取り上げていただきました。

 二年目、三年目とどんどん観光客が集まってくるようになりました。今では、三月の約一ヶ月で、有料入場者数が一〇万名を越えるイベントに成長しましたが、これまで全く動かなかった商店街の人たちも、自分の店先に雛人形を飾ったり、花を飾ったりしてくれるようになりました。

 「石の上にも三年」といいますが、地方では「石の上にも五年」ですかね。それでも、動き出してくれるのはあり難いことです。がらんとしている商店街よりも、人でにぎわっている方が楽しいですからね。

■民間人の登用

 このように、四季折々のイベントを少しずつ増やしていって、ともかく人寄せをしようと思いました。そのためには、民間の知恵を活用するためにJR佐賀駅長を観光振興課長にスカウトしたり、西村晃先生に、マーケッテイングの講座である商人塾を開いていただきました。

 今では、民間人をスカウトした管理職はいませんし、西村先生の塾も市役所との関係はなくなりました。別のイベントを作り上げたという話も聞きません。私の考えた重要な柱がいくつも崩れてしまいました。残念ながら、資金繰りも金利のこともわからない役人だけでは中心市街地の活性化を図ることはとても出来ないと思います。
 
 
 
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