俺の会社意識は立派だが時代の遺物
前回、このコーナーでリポートしたA会社社長に、企業買収の打診を図った。
「現在の厳しい局面で、社員の抜擢は難しい。ただ、身内が後継する可能性があるから、事業存続の形態をどう決断下すかには、今しばらく時間が要する。ただ、会社を外部に売却することはしない。いつでも清算する心構えはできている。」
と語った。確かに、関係者に迷惑をかけない準備ができている経営内容は素晴らしい。必ず清算する際には仕入先に何らかのカット要請があるのが世の常だから。
A社の企業評価は2億円である。清算しては、2億円の金は握れないであろう。「金銭問題ではない。会社こそが自分の命。」というオーナー意識は立派だ。ただ当方としても依頼があって調査した結果、A社が適格と結論に至った。依頼先とA社が関連グループとして連携・共同戦線をはれば、『1プラス1が10になる』理想の結婚と読んだつもりなのだが。依頼先のグループに所属すれば「A社の社員達も鼻が高くなったはず」と確信している。
デベ業界の新地平への挑戦
6月14日の『ネットIB』「企業耳寄り情報」のコーナーに、『西武ハウス、ソロンコーポレーション、ビジネスワン、合流か』の記事が掲載された。この観測球をもう少し精査報告する。この動きの中核は、ソロンコーポレーション(SO社とする)である。業界随一の先見性のある同社の社主である田原氏は、3年前から現在の不動産不況を見越して縮小経営に踏み出してきた。手持ち不動産を処分しつつ、タイアップ企業を探してきた。ところが昨年の冬に体を捻って、治療に専念する不運が襲った。多少、当初のスケジュールが遅れている嫌いがある。この1年間は田原氏も『歯痒い思いをしたことだろう』と同情をする。
SO社と西武ハウス(SI社)の関係は、SI社の豊福社長が田原氏を経営者として私淑していることに始まる。SO社が福岡飛行場に隣接した住宅展示場跡地を売却する時も、SI社が一番に手を挙げて引き取った。豊福社長のビジネス上の判断のもあるが、「師匠のピンチに一肌脱ぎたい」という、恩返しも強力な動機になっている。SI社はこの住宅展示場跡地の商品化を計画したが、出口のファンドが定まらず頓挫している。
「合流か」の観測球が流れる要因としては、「企業耳より情報」の内容以外に、マンション管理会社の一体化がある。SO社は、潰れた『じゅう』の事業を継承した管理会社を傘下に置いた。この会社とSi社の子会社である管理会社とを、ビジネスワンの子会社化したことにある。まず管理物件を統合して増やし量の力をつけるという布石だ。次にSo社とSi社が同じビルに入居することで、営業・企画・管理の効率化を図ることも伺われる。
問題になるのは資金調達である。ここは福岡シティ銀行の有名な外交マンであり、九州リースサービスの専務の要職にあった金融のプロ、尾崎氏が控えている。同氏は現在、ビジネスワンの社長に就任した。この後ろには、コマシャールアールイーが控えている構造になる。強力な上場会社の後ろ盾があれば、多種多様な資金調達が可能と関係者達は判断しているのだ。「俺が俺が」の我を通し合う業界であったデベの世界で、観測球通りに事が進み成功裡に終われば、非常に画期的なことである。まさしく、縮小均衡から反撃できる、理想な戦略であると評価されるであろう(続く)