人と地域を結び続けて福岡の元気は「人」と「文化」で創造する
福岡に足りないものとは
10年間の現場経験の後、RKBニュースワイドのキャスターとなった納富昌子氏。足かけ15年にわたって地域の顔として活躍。現在はメディア事業推進局に異動し、イベントプロデューサーに。「白洲正子」展などをヒットさせる傍ら、インタビュー番組「元気by福岡」も手がける「二足のわらじ」状態だ。
「人との出会い、ご縁の恵みによって仕事ができている。人が趣味みたいなものです。『元気by福岡』では、有名、無名を問わず、地域を元気にしてくれる人、ストーリーを持っている人を発掘しています。イベントプロデューサーとしては、『福岡ではできない』というものを敢えて手がけていきたい。『白洲正子展』を手がけたときも『誰も知らないよ』と言われたが、大成功だった。福岡は文化に対して懐の深い地域なんです。福岡は政治・経済も華やかだけど、それだけでは街は元気になりません。文化は歴史を越えて継承されるもの。人を楽しませ、考えさせ、豊かにする。人を育て、元気にするのは文化なのです。政治・経済・文化の三位一体で発展を遂げなければ街は成熟しません。文化を核として、福岡を元気にしていきたい」。
地元の名士を集めて「上水サロン」なる文化サロンを立ち上げ、文化の交流拠点づくりを進めているという。
市場原理に浸かりきっている多くの現代人には、理解しがたいのかもしれない。しかし、文化が産み出す都市の活力について、納富氏は次のように洞察する。「福岡は元気だとはいうけれど・・・。何かが足りない。鴻廬館の時代から、異国の人、異質な文化を受け入れてきた。それは九州人の気質でもあり、そこに人を包み込む文化があった。お人好しがたくさんいて、元気にのびのびと暮らせる素敵な街だったはずなのに。都市化の影響でしょうか、人まで変にミニ東京化している部分はありますね。『黙って無関心』というか。福岡が本当の意味で元気になるためには、『アジア』という視点が不可欠。成長するアジアの血潮、活気を福岡へ取り込むことが必要ですね。『アジアマンス』とか『アジア国際映画祭』とか、枕詞ではよく使うようにはなったけど、まだまだ『アジアへの片想い』に思えます。物やお金の往来は確かに増えました。あとはもっと「人と人」、「文化と文化」でつながっていくことですよね。昔の「大陸浪人」ではないけど、もっとダイナミックな交流があればいいのにと思います」。
放送局は究極の接客業
納富氏の表情はエネルギーに溢れている。しかし、その裏には人知れない「懊悩」もあるようだ。
「ブラウン管を通じて皆さんに知ってもらえるようにはなったけど、それは『虚像』に過ぎない。それでは終わりたくない。人の気持ち、痛みが分かるつもりでキャスターをやっていたが、今はイベントプロデューサーとして自らセールスもやるようになり、皆さんに直に接してみて、はじめてわかる『痛み』や『息づかい』があることを知りました。物事は知れば知るほど白黒つけがたい。視座によって見方、考え方も違ってくることがわかって、コミュニケーションの奥の深さをしみじみと感じています」。
納富氏は「それでもなお」、と言う。「人と人とのつながりが原点。企業や地域、人々とのつながりを持つことでしか、デジタル化時代の地上波放送局は生き残っていけない。そういう意味では、放送局は究極の接客業と言えます。身体が動く限りは人と人とをつなげるお手伝いを続けていきたいですね」。
私たちは、お金につられて「虚像」ばかりを追ってはいなかっただろうか。人と人が紡ぎ出す文化、福岡の「実像」に目を向けてこそ、都市の活力は再生される。納富氏には末永く、福岡の元気を創造し続けていただきたいものだ。
[プロフィール]
RKB毎日放送 メディア事業推進局次長
納富 昌子(のうとみ まさこ)
昭和28年、福岡県飯塚市生まれ。昭和51年、西南学院大学文学部卒、RKB毎日放送入社。
報道部記者、RKB「ニュースワイド」キャスターを経て、平成13年事業部に異動、イベントプロデューサーに。
この間、福岡県女性問題懇話会委員、福岡北九州都市高速道路委員会委員、福岡市女性センターアミカス理事、福岡市CO2削減委員会、博多湾長期構想検討委員会委員などを務める。
会社住所:福岡市早良区百道浜2-3-8
TEL:092-852-6606
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