《袋小路に追い込まれている新福岡空港建設論議−2》
わたしのように、ふるさと福岡を離れて20年が経つ者の立場からすると、昨日紹介した大前研一氏のコラムと同様、新福岡空港を建設しようという福岡都市圏経済界の理屈に納得できる部分は残念ながら見いだせない。
そもそも、経済界は新空港建設の必要性について県内においてさえ説得できていない。福岡市を離れ、福岡県の南部で政治的実力者や経済人に話を聞くと、新空港新設より県境をまたぐ、「お隣の佐賀空港の使い勝手をもう少しよくしてはどうだろう」などという話が普通に出てくる。
東側へ回ると当然ながら、「福岡都市圏で新空港の建設を訴えるのは勝手だが、北九州空港の整備もお願いしますよ」となる。
地元県内の重要な人々でさえも、新空港建設の必要性について説得できていないこのような状況では、大前氏や20年も福岡を離れて海の向こうで暮らす私のような外野が理解できるわけがない。
地元でさえも説得できないことが、非公式な場ながら福岡での新空港建設は困難ではないかというような印象を受ける話が国の役人の口から着易くついてでたりする雰囲気をつくっているのだろうとも思う。
新空港建設の必要性を訴える論議は、こんな状況で袋小路に追い込まれている感がある。
《新福岡空港は建設済み》
もう1点、福岡に新空港をという議論の勢いをそぐのは、06年に北九州空港が小倉南区曽根の旧地からリニューアルして周防灘の海上に開港していることだ。福岡都市圏の経済界が新空港建設の必要性をどう説明し訴えようと福岡県内にはつい2年前に新空港が建設されているではないかと部外者ならば普通に思う。
福岡都市圏経済界からすれば、北九州空港はあくまで北九州都市圏の空港なのだ、ということなのだろうが人はそうは思わない。福岡市や北九州市のような政令指定都市には必ず1ずつ空港をという決まりもない。
同じく政令指定都市で約370万人の人口をかかえる横浜市内に空港はなく、横浜市民は東京国際空港(羽田)を利用するわけだが、横浜市に新空港の建設をという声は起きない。首都圏人口は約3千万人といわれるが、現有3本の羽田の滑走路を横浜市民は首都圏全体の人口とで共有している。首都圏全体で見ると滑走路1本で約1千万人に対応していることになる。
一方、福岡市は人口約140万,北九州市が約100万人。福岡県全体で約500万人。そして、福岡県内には2本の滑走路があり、250万人に1本の滑走路が用意されていることになる。しかも、1本は2年前に整備された新品だ。外側から冷静な目で見れば「福岡には2年前に新空港が建設されているのに」と考えるのが普通だ。
6月30日に行われた国土交通省専門委員会の発表に、今日まであった現福岡空港に第2滑走路を建設するという3案に新たな案として「改良案」が加えられたことは、2年前に新空港はできているのだから滑走路の増設で勘弁してねということなのかもしれない。
バンクーバーのアトリエから見ているとそう思えるのだがどうなのだろう。
田中勝 (バンクーバー在住)
おわり