《PIの経過に憂鬱な経済界》
実は、この間、新空港の建設推進を訴える経済界の間には強い危機感があった。新空港の建設以外に福岡空港の混雑を緩和する道はないのだ、とする経済界の立場からすればPIステップ3に現空港の増設3案が加えられたことは、国が増設案へ傾いているのではないかという観測を強くするからだ。
報道で増設案がクローズアップされたことも憂鬱であった。大型公共事業を推進することに対する不信感から新空港の建設に懐疑的な県民世論を助長することになったからだ。
そんな、経済界の不満と憂鬱を助長する発言が今年に入って重なる。
新春のある会合で麻生知事が増設案でいくと発言したなどとベテランの域に達する某福岡市議が吹聴して回るということがあったらしい。ここら辺から福岡の経済界が航行する新福岡空港建設実現という目的地を目指す航路の行き先に乱気流とまでは言わないが、気流が乱れはじめた感があった。
麻生知事に近いある長老格の県議は、麻生知事は昨年の暮れには増設案を主に考えていたようだが今年に入って再び新空港建設案に傾いたのだ、とふるさとの友人に語っている。
そういえば、6年前の麻生知事が3期目に挑戦する選挙で、それまで力強く訴えていた玄界灘沖への新空港建設案を引っ込めてしまい、選挙期間中空港問題については一切口を閉ざしてしまうということがあった。私は、バンクーバーの私室におくパソコンを覗き込みながら、新空港建設の是非は別として、ふるさとの指導者のこのような政治的変心を行なうことは、どういうものかその経緯に注目していた。
聞く所によれば、あの時の麻生知事の変心は、玄界灘という外海(現在、建設されている世界の海上空港はいずれも内海。玄界灘への空港建設が進められれば外海への空港建設として初めての例となる。外海への空港島建設は建築技術上、また航空機操舵技術上、いずれの面からも困難だという話はよく聞く)に空港島を建設することについて、技術的な面で無理があると側近から忠告されてのことであったという。
昨年末から今年の初めにかけて増設案から、再び新空港案へと変転したのは厳しい県の財政を考えると、負担を限る事ができる増設案をと考えていたが、増設案を進めた場合必要となる空港拡張部分の土地買収の困難さについて忠告をするものがあったからだという。
ついでまでに述べると、昨年末から今年の始めに渉る、麻生知事の福岡空港問題に対する考えの変化をふるさとの友人に耳打ちしてくれたという、この県議ご本人は、現空港を増設するよりも、まず、福岡都市圏から50キロ圏内に位置する北九州空港と佐賀有明空港の両空港を福岡空港と連携して活用していくことで対策を講じるべきだという自説をもっているという。
同じ県議でも、特に知事に親しく影響力もある人物が増設案はおろか、近隣空港との連携案を考えとして持っていることも、また経済界には頭痛の種であるかと察せられる。
田中勝(バンクーバー在住)
つづく
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