▼01 人工島への高速道路延伸 最低6年の指摘も
実現までの遠い道のり
▼02 「説明会を待ってもらえず残念」
吉田市長、住民投票の動きに不快感
▼03 こども病院人工島移転再考 その17
こども病院は「大人のための」病院にあらず
▼01 人工島への高速道路延伸 最低6年の指摘も
実現までの遠い道のり
こども病院の人工島移転をめぐって、最大の問題とされる「交通アクセス」。
市は高速道路の延伸について言及するが、実は実現までの道のりは遠い。それどころか、関係機関との実質的な協議さえ始まっていないことが明らかとなった。
福岡市はこども病院の人工島移転に関し、交通アクセスという最も重要な問題を、あやふやなままことを進めてきた。
予想される救急搬送時の渋滞、通院や医療スタッフの通勤の不便さ、どれも致命的な欠点である。
市はバスの運行に言及し始めたが、ほとんど説得力を持たない。もうひとつ、交通アクセスの欠点を補うため「都市高速の延伸」を図るというが、簡単には実現できないことが明らかとなった。実現まで最低5~6年と指摘する関係者もいる。
保健福祉局 高速延伸の時期分からず
取材班は、こども病院にかかわる福岡市の関係部門に話を聞いたのだが、極めて杜撰な実態がうきぼりになった。縦割り行政の弊害なのか、肝心かなめの保健福祉局新病院創設担当はもちろん、港湾局アイランドシティ経営計画部の職員も、都市高速道路延伸計画については、担当部署が違うので具体的スケジュールは分からないという。
患者家族や市民向け説明会で「都市高速を人工島まで延伸する」と公言しているが、具体的なスケジュールを知らない人間ばかりが「希望」を述べているに過ぎないということらしい。
直接の担当はどこなのか聞けば、市住宅都市局・都市計画部交通計画課のアイランドシティ自動車専用道路担当という役職があるという。なんと今年の4月に担当職員を配置したばかりとのこと。実に悠長な話である。さっそく、担当職員に直接話を聞くことにした。
都市高速の人工島への延伸については、現在どの程度の状況まで進んでいるかの確認である。概略を紹介してみたい。
記者 作業としてはどこまで進んでいるか?
職員 県と勉強会を始めている。
記者 違うのではないか。勉強会をやろうかという話だけで、実際には始まっていないのではないか。
職員 分科会ということでやっている。
記者 幹線道路協議会での議論のことか?協議会のテーブルにも上っていないではないか?
職員 協議会にはまだかかっていないが、検討はしている。
だいぶあやしい話になってきたところで、少し解説をしておきたい。「都市高速を延伸する」と簡単に言うが、計画段階で、県・福岡市・北九州市・国交省・福岡北九州高速道路公社などで構成される「幹線道路協議会」での議論を経なければゴーサインは出ない。
その「幹線道路協議会」での議論も始まっていないうえ、市の担当職員がいう「勉強会」さえ始まっていないのである。市職員の嘘とは言いたくないが、事実、県の担当職員は「勉強会は始まっていない」と明確に答えているのである。
つづく
▼02 「説明会を待ってもらえず残念」
吉田市長、住民投票の動きに不快感
福岡市の吉田宏市長は15日、市立こども病院について記者会見で語った。14日に人工島移転に反対するグループが市民の是非を問う住民投票条例の制定に向けた会を発足させたことについては、「17日の説明会を待ってもらえず残念。話した後でも良かったのではないか」と不快感を示した。
記者会見の主なやりとりは次の通り。
―市民団体が住民投票条例の制定に向けて署名集めを行う会を発足させた。市長の受け止めは
「認められている市民の権利の行使なので、冷静に受け止める。あさってお会いするわけなので、正直なところ、話し合いをした後それからでもどうだったのかなと思う。残念。我々としては、専門家の話を聞いて、手順を踏んでやっている途中だけどなあ。非難するわけではないが」
―今後市のスケジュールに変更はあるのか
「署名が始まるのは8月31日だから、結構時間がかかる。進み具合はあるだろうが、我々としては進めておくべき準備があるので、条例制定の動きをにらみつつではあるが、我々の手順でいく。当初のスケジュール通りということだ」
―交通アクセスについて、17日の説明会ではどんな話をするのか
「アクセスは西鉄バスの乗り入れの予定を説明しようと思う。都市高速道路の延伸については国、県を含めて協議する。関係機関にも理解を頂けるようだと直接申し上げたい」
―人工島移転で懸念される市西部の医療のカバーについては
「何人小児科医を増やせるか、具体的にはわからないが、関係者は協力すると言って頂いている。十分なバックアップ体制をとっていくと言う」
―10日の市民向け説明会では反発の声が多かったが、今後説明会を開くのか
「17日をやって全体的に判断していきたい。毎回同じようなことであれば、お互いが押し問答を続けていても仕方ない。17日は私も一生懸命説明したいし、聞きたい」
―患者家族に伝えたいことは
「与えられている条件でベストではないが、なぜ検証・検討でアイランドシティがベストになったのかを申し上げたい。ものすごく時間をかけてできる限りの可能性について検討した結果を出している。結論ありきだとか、開発会社を救済するためではない。子どものことを考えていないと言われることは心外だ」
―考える会、反対する会、市民、保護者の申し入れも世論であり、表面化していない声もある。市議会の議決以外で、市民の最大公約数的な民意を探ることはしないのか
「アンケートの実施などは考えていない。いまも表立っていろんな考えの人がいる。私もいろんなところから情報を吸収している。東西の場所対立にはなってほしくないと思う人もたくさんいる。あえてアンケートをやるつもりはない。住民の権利としてやることは最大限尊重するが、行政的に進める責任もある。責任の範囲として、やるべき準備をやっていく」
【記者の目】市長が不快感を示したが、不快感を抱いているのはむしろ市民ではないか。こども病院移転問題について、吉田市長はこれまで、直接市民の声を聞くという「公約」を果たしていない。市民向け説明会が開かれた10日は、「公務」で東京にいた。これまでの姿勢を見る限り、市民と向き合っているとは言いがたい。そうした積み重ねが市民や患者、家族の反対運動を引き起こしている原因でもあるだろう。残念と言いたいのは、市民ではないか。
▼03 こども病院人工島移転再考 その17
こども病院は「大人のための」病院にあらず
久保田院長:先日の中国の大地震ではたくさんの犠牲者が出ましたが、倒壊する建物とそうでない建物がありました。それを分けたのは「地震に備えてあったか」という一点に尽きます。倒壊を免れた建物は、ちゃんと鉄筋が打ってありました。一方倒壊した建物は、「おから工事」と言われるほど、鉄筋が少なかったのです。
―― 「予防」について配慮しておくことが、何かあったときの被害を最小限にし、長い目で見れば、経済的にも得をする、ということですね。
久保田院長:繰り返しますが、予防医学、つまり、病気になる人を減らさない限り、医療に対するあらゆる投資は増え続けます。福岡市は、周産期医療に関しては、こども病院を移転するなどということを考える前に、急増する「発達障害」への対策を講じる必要があります。
また、こども病院に高次の周産期医療の機能を担わせるのであれば、搬送時間の短さが、後に障害を残すか、残さないかの大きな要因であることを忘れてはならず、何があっても30分以内に来られるところでなければなりません。
――「広くて快適で、安く上がるから」という理由で人工島に移転させようとする市の方針は、予期しうる事態を少しも考えていないという点では、「おから工事」と変わりない、ということですね。
久保田院長:もう一度、こども病院は、大人のための病院ではなく、こどものための病院であるということ、未来を担うこども達を幸せにするのが大人の仕事であるということを思い起こしていただきたいと思います。大人が大人のための病院にしてはならないのです。
こども病院は数年前、16億円かけて、水道や排水の工事を施しました。今すぐ、老朽化して使い物にならなくなるということはありません。まずなすべきは、予防医学的観点に基づいた病院のあり方、デザインを描くことです。みんなが拍手をもって、こども病院を作れるような場所でないと、万一のことがあったときに、必ず禍根を残します。患者、家族、そして市民みんなが納得して、それが未来のためになるということがこども病院の条件なのです。
――どうもありがとうございました。
日下部晃志
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