福岡市の「市政だより」やホームページを見ると、人工島の地盤について、「地盤改良を行なっているから大丈夫」との見解を公表している。こども病院移転問題でも、当初から問われてきた地盤の安全性だが、「安全」を強調する市側の説明に、改めて疑問を呈しておきたい。
まず、写真を見ていただきたい。これは、平成17年(2005年)3月20日に起きた福岡西方沖地震の翌日、つまり3月21日の午前中に撮影したものである。
写真(1)では、大半の電柱が島の東側に向かって倒れかかっていることがわかる。
(2)は道路に走る亀裂
(3)は噴砂の凄まじさを如実に示すものである。
(4)は地震の力が建造物に与えた衝撃がわかるだろう。
こどもの命は本当に守れるか!?
地震発生当初、福岡市は「液状化」の事実を認めようとしなかった。しかし、その後の学者や市議会などの指摘を受け「噴砂」という表現で液状化を認めている。役所は非を認めないという伝統を守り、いまだに「地盤改良が完了しております住宅等の分譲地での液状化現象は起きておりません。」などと姑息な表現を使い続けている。
地震の被災状況を示す文書にも「液状化」という表現は使わず「噴砂」と記している。取材班は、改めて市アイランドシティ事業計画課に話を聞いた。
前出の写真を提示したところ、いきなり「液状化によるもの」という回答が返ってきた。「噴砂」という表現を使うのかと思っていたが、あっさりと液状化と認めていただいた。
再度写真を示して「液状化が起きた場所の真横にこども病院を建てるということでいいか」と確認したが、ようやく記者の意図を察したらしく、「分譲地は大丈夫だった」、「液状化は当時(地震当時の意)のこと」など、話をはぐらかすばかり。
いずれにしても「液状化」の証拠写真の前には、何も否定できなかった。こども病院移転予定地は、福岡西方沖地震の折、間違いなく写真のような惨状を呈していたのである。
もともと、「海ノ中道大橋」と「香椎アイランドブリッジ」を結ぶ人工島中央部の道路は、福岡市工区と博多港開発工区の境界にあたる。この道路を境に西側が福岡市工区、東側が博多港開発工(現在埋め立て中の旧博多港開発第2工区は、その後、税金投入で福岡市第5工区となっている)となっていた。こども病院移転予定地は、博多港開発第1工区のはずれにあたる。つまり、市工区と道路を挟んで工事業者も工法も違う土地の端に液状化が起き、そこにこども病院を建てるというわけなのだ。
もし個人で住宅を建てるとして、写真のような由来がある土地を選択し、大金を投じるだろうか。おそらく、大半の人が嫌がるだろう。今、こどもの命を守るための病院が、誰もが嫌がるような土地に建てられようとしている。再び大きな地震が来て、万が一のことがあったら、建設用地を決定した市長や役人、議会だけでなく、それを許した大人の責任ということになる。
だからこそ、広く市民の意見を聞く必要があるのではないだろうか。そのためには、液状化の現実についても、姑息な表現を使わずに、ありのままを伝えなければならないはずだ。
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