▼01 人工島への高速道路延伸
食い違う市側説明と現状
▼02 こども病院人工島移転再考 その18
人工島移転の投資が無駄になる可能性
▼03 市民の力 引き出す市政へ(上)
市役所OBの建設的意見
「高速道路の延伸は市だけでなく、国、県を含めて協議するが、(国や県からも)ご理解いただけるようだ、と患者家族に説明する」―。15日の定例会見で吉田宏福岡市長は、都市高速道路の人工島延伸計画について、こう述べた。
こども病院の人工島移転問題では、交通アクセスの悪さが再三指摘されている。市側もアクセスの悪さは認めており、「(他の整備候補地よりも)利便性は劣る」と説明会資料に明記している。そこで、アクセス改善や交通渋滞の対応策として、(1)高速道路の延伸(2)西鉄バスの乗り入れ(3)橋梁の拡幅――といった対応策を公言してきた。
だが現実に高速道路の延伸計画は容易ではない。昨日の市政ニュースで報じたように、関係機関との実質的な協議さえ始まっていないうえ、具体的なスケジュールの見通しも立っていない。県の担当者は、取材に対し次のような見解を示している。
県にはとっては他人事
担当者は開口一番、「うちは新聞情報で知るのみだから。外向きに話をするようなことは何もない」。市が開始したとする市と県との勉強会については「勉強会をやろうか、という程度の話はあった。しかし何も具体的なものはない」。市側の話とはずいぶん温度差がある。もちろん、昨日指摘したように、延伸決定の前提である「幹線道路協議会」のテーブルにも上がっていないという。
高速道路の整備費用の負担割合については、「いろんな事業方法があるが、福岡市だけの負担でも整備は可能です。どうしても都市高速道路を延伸したいと言われるなら、福岡市だけでもできるのでは」とまるで他人事。延伸はあくまで市の構想であり、県には関係ないと言わんばかりの口ぶりだった。
また県の対応からは、唐突に都市高速道路の延伸を公表し、「国や県の協力」を勝手に決め付ける福岡市に対し、懐疑的になっているのではないかとの見方もできる。市長発言にあった「関係機関からもご理解を頂けるようだ」とは、国や県などにも事前に話を通しているように聞こえるが、どんな根拠があるのだろう。食い違う内実と市民に対する説明。
これは「都市高速を人口島まで延伸させる」と断言する状況ではあるまい。
都市高速道路の延伸には、1kmあたり100億円から150億円が必要とも言われる。市は、延伸を人工島の交通アクセス向上の切り札と言わんばかりに強調するが、巨額な移転費用とは別に、さらに莫大な血税が注がれるということに過ぎない。本来、その是非も市民に諮るべきことなのである。批判をかわすために場当たり的に処方箋を乱発する吉田市政…。効き目がないどころか、薬自体が売っていないという現状では、予算について議論することさえムダかもしれない。
つづく
▼02 こども病院人工島移転再考 その18
人工島移転の投資が無駄になる可能性
本稿では昨日まで、こども病院の人工島移転に関する周産期医療専門家の見解として、久保田麻酔科・産婦人科の久保田史郎院長の意見をお伝えしてきた。それをまとめると、以下の3点になる。
○ 福岡市がこども病院に付加しようとしている周産期医療には救急医療の側面がある。従って、市の中心部ではない人工島に移転させるというのでは本末転倒である。
○ 医療スタッフのQOL(quality of life)の面からみても、こども病院は現在地にあるのが望ましい。
○ 福岡市では、「発達障害」のこどもが激増しており、この問題を放置することは、福岡市の将来に重大な影響を及ぼす。予防医学の観点から、発達障害が少なくなるような医療政策が必要で、こども病院の移転などより先に考えるべきだ。
もし、この3点を無視してこども病院を人工島に移転させれば、以下のような事態を招来することになる。
● 巨額の税金を投入して(市の試算では87.7億円)人工島に新しい施設を作ったとする。しかし、市の中心部でないため、救急の患者は周辺地域からしか搬送されず、収支が悪化することが考えられる。
● たとえ患者が遠方から運ばれてきたとしても、処置までの時間がかかり、患者に障害等が残る可能性が高くなる。医療費は増大し、悪くすると訴訟リスクを抱えることにもなりうる。
● QOLの低下により、医療スタッフが減るようなことになれば、残ったスタッフへの負担が増加するばかりか、最悪、診療科を縮小するような事態にもなりうる。
これでは、いくら「広くて、医療機能が充実した病院」を作っても意味がなくなる。市は周産期医療を充実させようとして、かえって、医療崩壊を招こうとしているようにすら思える。つまり、人工島移転に関する投資は「無駄」になる可能性が高いということだ。
「考えすぎではないか」「それぐらい市、こども病院側も見通しているのではないか」という意見もあるだろう。
そこで明日より、7月10日の市民向け説明会の席上、久保田院長と福重淳一郎こども病院院長がやりとりした質疑の模様を検証してみたい。ご覧いただければ、前述の予測が正しいのか、そして市側の移転を進める論拠に「道理」があるのかどうか、はっきりするはずだ。
日下部晃志
▼03 市民の力 引き出す市政へ(上)
市役所OBの建設的意見
点でしか物事を見ない市政ではだめ
最近、福岡市役所の職員OBから、貴重なご意見をいただく機会が増えた。こども病院の人工島移転問題でもたつく吉田市政に、いらだちを感じるらしい。しかし、辛らつな批判とともに、吉田市政が取り入れたら評価が上がりそうな建設的な話も多い。2回に分けてそうした声をご紹介する。
市政ニュース取材班は、こども病院移転問題について、さまざまな角度から追及をつづけてきた。交通アクセスの問題、ヘリポートやベッド数についての矛盾、用地面積を4ヘクタールに拡大するという「闇交渉」、9月議会では「(市長案を)否決しない」との自民党の動向などである。
現在は、福岡西方沖地震での液状化現象が、まさに、こども病院移転用地の側で起きていたことや、市が公言する「都市高速の延伸」が簡単にはできないことなどを報じている。
患者家族や市民の「移転反対」の声も、日増しに大きくなっている。そうした現状を、市役所から離れたところで見ている職員OBは、「ただただ腹立たしい」という。
「今の福岡市は、物事を点で見ているのではないでしょうか。こども病院の移転という点の問題にこだわり、アイランドシティあるいは周辺の地域も含めた街づくりという視点を欠いているようです」
「簡単に高速道路を延伸するというけれど、あれは延伸ではなくランプを作るという発想でないと容易ではない。高速道路は簡単に延伸できるものではないでしょう」
(記者の5~6年かかるはずだがとの問いには)「指摘通り、新しいこども病院が開設しても、高速道路はその1~2年後ということになる可能性がありますね」
「進藤市長は周囲に全てを任せて、ここという時にズバリと決断を下した。桑原市長は力で押さえつけるところがあったが、時代の要請にはマッチしていた。山崎前市長から少し風向きが変わりました。市民の声に反応するようになった。こども病院に限っての話ですが、いくつかの移転候補地を市民に提示して議論してもらうべきでした。つまり、大切な部分を市民の判断に委ねるという姿勢が全くなかったということでしょう。
今の時代は、そうした手法が求められているはずです。しかし、『検証・検討』と称して役所が全部やって、結論まで出してしまったら、市民の出る幕はないでしょう。納税者としては納得できないということになりますね。これでは市民と行政が共同することにはならない。今の市政は確かに間違ったやり方をしています。リーダーシップを発揮しているのが誰かも判然としない」
淡々と語りながらも、進藤・桑原・山崎と3代の市政下で力を揮ったOBの言葉には、説得力がある。続いて聞かされた話は、まさに秀逸だった。
つづく
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