▼01 こども病院人工島移転の白紙撤回を
8団体が9万超の署名で議会へ請願
▼02 こども病院人工島移転再考 その19
医療関係者同士の応酬 第1幕「箱の中身」やいかに
▼03 市民の力 引き出す市政へ(下)
市役所OBの建設的意見
▼01 こども病院人工島移転の白紙撤回を
8団体が9万超の署名で議会へ請願
市民団体「福岡市立こども病院の人工島移転に反対する連絡会」(代表・石村善治福岡大学名誉教授)など8団体は、市議会にこども病院の人工島移転を白紙撤回してもらおうと、9万3,586人分の署名を集め、17日までに市議会に提出した。22日に開かれる第二委員会で審議される。8団体のメンバーは市役所で会見し、「市長は私たちに会おうともしない」「公約違反だ」などと怒りの声をあげた。
8団体はこども病院の人工島移転について、騒音などの周辺環境、アクセス、市内の医療バランスなどからやめるべきだと主張しており、6月18日に6万4,532人の署名を添えて市議会に提出していた。この日は追加分の2万9,054人分を加えて提出後、会見に臨んだ。
石村代表は「署名を求める中で、『こどもの命を考えてほしい』『市長は公約違反だ』『人工島移転は債務の穴埋め』といった市民の熱い声を聞いた。市議会でもぜひ請願の趣旨を採択して頂きたい」と主張。ほかのメンバーも「人工島は飛行機の騒音、コンテナの光や音などで難病を抱えた子どもの施設にそぐわない」「説明会も市政だよりも先に人工島ありきの文言。市民はだまされたと思っている」などと語る。
人工島移転をめぐっては、患者家族らのグループが住民投票条例の制定に向けて動き始めたが、8団体は「22日に市議会の委員会で請願の審査がある。その行方を見守り、歩調を合わせていくかを検討したい」としている。
人工島移転反対の旗の下、各方面で市民活動が盛んになっている。こうした市民の声にどう応えるか。吉田市長、市議会の今後の対応が注目される。
豊田 伸
▼02 こども病院人工島移転再考 その19
医療関係者同士の応酬 第1幕「箱の中身」やいかに
市民からの多大な反対意見があるにもかかわらず、なぜ市側はこども病院移転を押し進めようとしているのか。そこに「道理」はあるのかどうか――。それを浮き彫りにしたやりとりをお伝えする。
7月10日に行われたこども病院人工島移転に関する説明会での、久保田院長と福重淳一郎こども病院院長のやりとりである。久保田院長は、中央区平尾で開業している周産期医療の専門家だ。現場に身を置く専門家からの鋭い指摘が、市が掲げる移転の大義名分の怪しさを明らかにしていった。
久保田院長:
市民の一人として、また、周産期の医療現場で働いている者として、人工島が良い・悪いと言う前に、少し聞いておきたいことがあります。
今度の新病院は、感染症センターを除いて、周産期を取り入れるということはわかりました。「箱」についてはわかったのですけれども、「箱の中身」である周産期医療は何を目指しているのか、院長先生にお尋ねしたい。例えば、年間に分娩数はどれくらいをみておられるか。医師は麻酔科、小児科で何人必要なのか。年間の分娩数に対して費用がプラスになるのか、マイナスになるのか。これがマイナスになるのなら、福岡市の財政から考えて全く頼りないですね。院長先生の目指す周産期医療、まずは分娩数から教えて下さい。
福重こども病院院長:
ご承知の通り、現在のこども病院は、年間約300人の新生児が他施設から搬送されてきています。そしてその3分の1は生後0日、1日から3日、先天性心臓病のお子さん方です。それ以外には、双子、三つ子などの低出生体重のお子さんがおられますし、こども病院で手術をお受けになったご婦人が出生なさるケースもあります。そういった観点から勘案いたしまして、少なくとも、現在、一年間で搬送される250~300人のお子さんの分娩は可能だと。少なくとも、お母さんが他施設におられて、赤ちゃんだけ搬送されるというような状況はどうしても避けたいと思っています。特に、県外、市外の場合はなおさらです。
現在は(産科がないために)多くの場合、妊婦さんに問題があるという状況だとなかなか対応ができません。おなかの中の赤ちゃんに問題があるという事例、お子さんを優先とした対応です。国内にある多くのこども病院は、既にほとんど産科を持っています。そういった先例を参考にしたいと思っています。
【解説】
市は新こども病院に周産期医療の機能を付加するとしているが、具体的な内容は明らかになっていない。この点につき、久保田院長はまず、年間の分娩数の見通しから尋ねていった。これに対し、福重院長は、現在の「年間の受け入れ数」を根拠として、250~300人と回答したわけだが、この根拠の「妥当性」に関して、久保田院長がさらに指摘する。(第2幕へつづく)
▼03 市民の力 引き出す市政へ(下)
市役所OBの建設的意見
ある市役所職員OBは、現在の吉田市政にいらだちを隠さない。こども病院の人工島移転問題について、先に全てを決めて市民を納得させようとする手法を「時代にマッチしない」と厳しく批判する。「かつては市民が『お上の言うことだから』と納得したが、今は市民の方から積極的に行政にかかわろうという姿勢に変わってきた。大変ありがたいこと。行政と市民が一体とならなければ、本当の街づくりはできない。
しかし、こども病院は人工島に移転させる、説明だけはしてやる、という紋切り型では反発を生むだけ。高速道路の延伸にしても、めどが立たないうちに場当たり的に口に出してしまう。『はじめに土地ありき』を証明しているとしかとられない」とした上で、こども病院移転問題に関連して次のような私見を披露してくれた。
「少子・高齢化と言いながら、お年寄りに対しては極めて冷淡な社会になってはいないか。アイランドシティを仕上げるためには、多くの市民の共感をいただける施策の展開が必要。こども病院という固定観念を捨てて、お年寄りのための病院を併設するとか、少子・高齢化に真剣に向き合う、新たな病院の形を模索することも可能だろう。
そうなると、まさに福岡市のシンボル的施設になったのではないか。お年寄りをはじめ、広く市民の声を聞けば、もっとすばらしいアイディアがあるかもしれない。こども病院という固有名詞だけが一人歩きしているから矮小化した議論になっている。多くの市民が賛同し、積極的にかかわりたくなるような仕掛けがない」さすがに、進藤市長時代からのたたき上げは言うことが違う。いまやお荷物となってしまった人工島も、発想次第で「市民の島」に変われるという。
別の市職員OBの話もご紹介したい。「進藤市長は桧原桜の逸話が示すとおり、きちんと市民の声を聞く市長だった。こども病院ができたのも進藤市長の英断。どれだけ幼い命が救えたか考えると、功績ははかり知れない。桑原市長は『俺について来い』。山崎さんは『共働』という言葉で市民の共感を引き出そうとしたが、オリンピックで自滅した。吉田さんは何をしたいのか分からない。公約違反ばかりが取りざたされるので、職員まで言い訳につき合わされている。役人の作文を読み上げるのではなく、もっと自分の考え方を前面に出さなければ市民の理解は得られない。市民の声を聞くということは、市民の考えが市政に活かされるということなのに、ただ聞くだけになっている。『百数十万市民の頭脳を結集して』とでも言って、下駄を預けてみてはどうか」。確かに、そうした市政運営がなされれば、吉田市長の株は上がるだろう。
激動の福岡市政を数十年間、内部から支え続けた職員OBの話は、じつに歯切れが良い。こうした人たちを集めて、市政運営の指南役として活用することも妙案ではあるまいか。
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