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特別取材

激変する融資スタンス 早急に求められる不況対策 | ズームアップ
特別取材
2008年7月23日 10:37

 福岡では、(株)矢緒企画、(株)インベストといった中堅企業が相次いで倒産するという状況に陥っている。倒産原因として、不況による販売不振、昨年6月20日に施行された改正建築基準法による影響などが挙げられるが、金融機関の融資スタンスの激変も、その要因の1つ。今回は、企業の資金繰り、金融機関の貸出態度、建設・不動産業向け貸出残高推移などに視点を当てて検証する

悪化する資金繰り 増加する倒産件数

 九州・沖縄の景気は、全体的に足踏み感が強まっている。輸出や設備投資が増加しているほか、個人消費も総じて見れば底堅く推移している。その一方で、住宅投資や公共投資は低調に推移。こうしたなか、生産や雇用・所得環境は横ばい圏内を脱しきれていない。

 日銀の6月短観によると、企業の業況判断は慎重化している。先行きについては、当面は輸出や設備投資が高水準で推移すると見込まれるものの、海外経済やエネルギー・原材料価格の動向には不透明感が強いとしている。

 【表1】は、九州・沖縄の全産業の企業金融に対する資金繰り判断D.I.であるが、この1年間で悪化していることは明らか。これは、原油価格高騰による資材価格の値上げ、消費需要の低迷などを原因とする売上高の減少、それによる資金繰りの悪化を示している。現状の景況感からして、この傾向は今後さらに深刻化してくるものと判断される。周知の通り、今年に入って建設業の倒産が増加傾向となっている。不動産業についても、4月の倒産が昨年来のピークを記録したと言われている。

融資スタンス激変

 【表2】は、九州・沖縄の全産業に対する金融機関の貸出態度である。この数値は、貸出態度が「緩い」と判断した企業の割合から、「厳しい」と判断した企業の割合を差し引いたもので、08年6月現在では「厳しい」と判断する企業の割合が増加している。【表3】は、建設業・不動産業に対する中小企業向け貸出残高及び増減率の推移である。景気低迷に伴い、全産業における貸出残高の伸び率は低迷しており、建設業の08年3月末残高は対前期比▲1.1%の11兆7,693億円となっている。この傾向は、今年度に入ってからの金融機関の融資スタンスの激変に伴い、さらに加速しているものと思われる。

 それでは、建設・不動産業に対する、各金融機関の具体的な対応を見てみよう。
 A行では「新規申込の場合、決算内容が良好だとしても、本部(審査部)方針によって申込時点ですべて断っている」と、厳しく対応。またB行では、「私たちは、建設・不動産業者との取引が他行と比べて比較的多いことから、かなりの業者のデータを有している。そのうち、正常先に対してはある程度対応しているものの、業況見通し、保全面、資金繰りなどの審査は今まで以上に厳しくしている」という。さらにC行では、「従来、既往の貸出が完済になれば反復に応じていたが、同額であっても反復には応じておらず、回収促進スタンスである」ということだった。いずれの金融機関の対応も、建設・不動産業界に対する逆風となっていることは間違いない。

さらなる事態の深刻化も

 金融機関にとって建設・不動産業への貸出は、ボリュームがあり、利鞘の稼げるものであった。しかしながら、不況となると真っ先に融資の窓口が閉じられる業種でもある。とくに福岡の場合、分譲マンションに見られるように、新築物件の林立から供給過剰の状況に陥っている。これでは、適正価格での販売も非常に困難である。金融機関からすれば、融資対象物件の販売見通しが立たない状態では、回収促進しか策が無いのは当然であろう。しかし、こうした状況が続き、さらなる事態の深刻化も懸念される。そのため、国に何らかの不況対策を求めるのは、建設・不動産業界の経営者の一致した意見であろう。


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