▼01 【独走スクープ】
人工島事業「見直し」は真っ赤な嘘!
現地建替え 排除する「報告書」
▼02 こども病院人工島移転再考その21
医療関係者同士のやりとり第3幕
▼01 【独走スクープ】
人工島事業「見直し」は真っ赤な嘘!
現地建替え 排除する「報告書」
「現地建替えではメリットがないような報告書にしろ」。そんな指示があったとしか思えない文書の内容が明らかとなった。福岡市立こども病院の移転問題で、現地建替えをシミュレーションした際、委託業者が現地建替えのデメリットばかりの報告書を作成していたことが分かった。また委託を受けた業者は、市立病院「統合移転」のためのアドバイザー業務を請け負っていた、いわば人工島移転推進の立場だったことも判明している。
人工島移転の見直しを公約としていた吉田宏市長は「まっさらな状態から検証・検討によって見直した」と胸を張る。しかし、報告書に現地建替えの可能性を探ろうという意思はない。報告書は検証・検討の要素となっており、「人工島ありき」の移転計画だったことがあらためて裏付けられた。
報告書は「福岡市立病院経営分析報告書」といい、市が東京に本社を置く業者に委託した。報告書の中で、こども病院を現地で建替える場合のシミュレーションを実施していた。その「はじめに」という最初の文章がすべてを物語っていた。
1.既存建物改修工事に伴って診療機能の停止や部分的な休止が不可欠なことを明らかにすることによって、メリットがあるプランとは言えないものであることを明らかにすること
2.現在地が持つ制約条件や診療を継続しながらの建替え計画に付随する諸問題を明らかにすることにより、理想から程遠い病院にならざるを得ないことを明らかにすること
要するに、現地建替えのデメリットを並べ立て、移転の適地を人工島に誘導するよう、市か業者か、どちらかの意図があって作成されたシミュレーションだったのだ。
現地建替え費、報告書より40億超上乗せの「検証・検討」
さらに報告書では、現地建替え工事費を85億5千万円と算出していたが、その後市が作成した「検証・検討」報告書では、128億3千万円と大きくふくらんでいた。
増額分の42億8千万円は、現在のこども病院を解体するローリング費用としているが、その算出根拠について福岡市の担当課長に聞くと、「ゼネコン3社に口頭で聞いたもの。積算根拠はない」と話す。
積算根拠のない40億円超の金額をプラスして公表し、「現地建替えには大変な金がかかる。市の財政負担から言っても厳しい」などと説明会で患者家族や市民に訴えてきた市当局。人工島移転にかかる土地取得費用(60億円以上ともされる)には触れず、人工島移転に都合のいい数字ばかりをアピールしてきた実態が明らかとなった。
市は来週にもこども病院の人工島移転を正式決定する。データマックス取材班は明日以降も、人工島事業「見直し」のウソを暴く。(つづく)
【特別取材班】
▼02 こども病院人工島移転再考その21
医療関係者同士のやりとり第3幕
7月10日に行われたこども病院人工島移転に関する説明会での、周産期医療の専門家で久保田麻酔科・産婦人科医院院長の久保田史郎院師と福重淳一郎こども病院院長のやりとりの第3幕。福岡市の将来の周産期医療開業医不足を理由に、周産期医療整備を前提とした新こども病院の正当性を主張する福重院長に対する久保田医師の反論。
久保田医師:
福重院長のおっしゃるとおり、福岡市の周産期は特殊でありまして、分娩数の7割くらいは開業医の診療所やクリニックでお産をしています。その他の県では、ほとんどが大病院での分娩になっています。福岡市や佐賀県が、開業医による分娩の割合が一番高い。
ところが後継者が育っていない。10年も経てば、福岡市の開業医院は半分ほど閉鎖してしまうでしょう。そうなれば、市内の開業医院で生まれる年間約9000人のうち半分はどこで出産すればいいのか。それを考えると、こども病院に周産期医療をつくること自体は非常にありがたいと思っています。でも、なぜ論点の整理をしていただけないのか。
私は、大学病院にいたころは、福重先生と一緒に仕事をしたこともありました。大学病院にいるとハイリスクの患者を治療することが多くなって「俺は一人前だ」という気分になるんですね。ところが開業してみますと、一番難しいのは正常のお産なんです。正常のお産をいかに正常にするか。今は、正常のお産があまりにも異常になっている。だからこども病院が流行るんです。
平成元年~19年の福岡市における発達障害児の増加(※)、これはびっくりするほどです。なぜそれをオープンにしないのか。アメリカでは福岡より10年も前に発達障害が問題になっていますけれども、その子たちが大人になったときの経済的な負担はどれほどのものになるでしょうか。
福岡市は赤字を少しでも減らさないといけない。だからこそ、こども病院の周産期医療センターを作るのはいいけれども、みんなが正常な分娩ができるようなところに作って欲しい。新生児が病気になったから治療します、ということだけではなくて、どうやったら病気にならないのか、障害が残らないのか、ついても考えなければならない。
普通、家を建てるときはみんな喜んで建てるでしょう。なのに、なんで皆さんがこんなに反対しているのですか。そこに問題があることを気づいて下さい。
【記者解説】
福岡市の将来の周産期医療開業医不足を理由に周産期医療整備を前提とした新こども病院の正当性を主張する福重院長に対し、久保田医師は「周産期医療を整えることは賛成」としつつ、「発達障害」を持つこどもが福岡市でも増加している現状、そして将来に及ぼす影響を指摘。周産期医療はただ命を救えばいいのではなく、元気に救わねばならないので、やはり場所についての検討が不可欠だと主張した。論点がわからないのか、とぼけているのかこれに対して福重院長は何とも頓珍漢な反論をし始める。(第4幕につづく)
※発達障害児の増加
発達障害とは乳児期から幼児期にかけて様々な原因が影響し、発達の「遅れ」や質的な「歪み」、機能獲得の困難さが生じる心身の障害を指す概念で、学術的には知的障害(精神発達遅滞)を含むが、一般的には、知的障害を伴わない軽度発達障害だけを指す場合もある。福岡市では平成元年~18年の間に、33人から263人へと8倍増になっている。
【日下部晃志】
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