▼01 検証・こども病院人工島移転
公約違反と政治家の目線
▼02 こども病院人工島移転再考その24
医療関係者のやりとり第6幕「勘違いされては困る」
28日、福岡市はこども病院の移転候補地を人工島にすることを正式表明した。「人工島ありき」で突き進む市に対し、患者家族の反発は当然である。もちろん、「こども病院の人工島移転を白紙にもどして見直す」とした吉田市長には「公約違反」の批判が向けられて当然である。
しかし、吉田市長は記者会見で「公約違反ではない」と開き直る。見直した結果、人工島がベストの選択なのだというが、データマックスの調べで、吉田市長が見直したとする「人工島事業検証・検討」自体が、水増し工事費でこども病院の現地建替えを否定した、極めてうさん臭い代物だったことが明らかとなった。
人工島しか検討していない検証・検討
こども病院の現地建替えは患者家族らから一番要望の多かった案である。市の「検証・検討報告書」にも見直しにあたっての「基本的な考え方」として、「検討にあたっては、まず、既にあるものを活かす観点から、現在のこども病院・感染症センターの改修と現地建替えについて、必要な医療水準の確保と財政負担の軽減の両面から、可能性や合理性を検討し、次いで、移転新築について検討を行なった」と記されている。
しかし、データマックス取材班によってあぶりだされる検証・検討の基礎となった業務委託の報告書からは、前述の「基本的な考え方」は微塵も読み取ることができない。
民間企業に委託したこども病院現地建替えのシミュレーションは、その冒頭で、現地建替えが「メリットがあるプランとは言えないものであることを明らかにする」「理想から程遠い病院にならざるを得ないことを明らかにする」として、否定するための作業であることを宣言していた。白紙からの見直しではなく、移転を前提にしたことになる。
吉田市長のコメントや、「検証・検討」の記述は「うそ」だったということにほかならない。
吉田市政の負の連鎖
これを「公約違反ではない」と強弁する吉田市長は、市民感覚ゼロの政治家である。福岡市民が吉田市長に期待したのは、彼が「負の連鎖」と称した人工島事業への税金投入などに、歯止めをかけてくれるという一点に対してだったはずだ。
選挙前の吉田宏氏のパンフレットには「吉田ひろしの思い」として次のように記されている。「重くのしかかる人工島のツケ、地下鉄の不安、天神の渋滞やオーバーフロー問題・・・。すべてが『背伸び』し過ぎたことによる当然の報いであり、借金を返そうとすれば、さらに大型の開発を呼び込むしかない『負』の自転車操業に陥らせた責任は重い」
博多港開発の借金返済のため、架空の工事費まででっち上げて、なにが何でも人工島にこども病院を移転させようという手法は、まさに「負の連鎖」である。前述の「吉田ひろしの思い」は、山崎市政批判の言葉である。選挙の対立候補を批判しておきながら、さらにたちの悪いことをやっているのが今の吉田市政ということになる。
9月議会でこの狂った市政を変えることができなければ、市長に対するリコールの声と同時に、議会批判も起きるだろう。政治家の目線、政治家の信念が問われる熱い季節が続く。
【特別取材班】
▼02 こども病院人工島移転再考その24
医療関係者のやりとり第6幕「勘違いされては困る」
7月10日に行われたこども病院人工島移転に関する説明会での、周産期医療の専門家で久保田麻酔科・産婦人科医院院長の久保田史郎院師と福重淳一郎こども病院院長のやりとりの第6幕。「広くて快適なところに移転して、医療機能を充実させれば患者は来るはず」という考えに固執する福重院長に対する、周産期医療専門家・久保田医師最後の指摘。
久保田医師:
先生、僕の一番最初の質問は、「こども病院を人工島に移転した場合、周産期の分娩は年間どれぐらいと考えていますか」というものです。先生は200~300とおっしゃる。本当にそれぐらいあれば(収支は)プラスかもしれません。しかし、実際はその半分以下になると思います。(1次医療を担う開業医の立場からすると移転したこども病院は)紹介できません。遠すぎて。西区も南区も中央区も城南区もこども病院には周産期の急患は送らないと思います。急患が出たらみんな子ども病院に来られると勘違いされては困るんです。
福重こども病院院長: 私は決して勘違いをしているつもりはありません。昨年度、107名の新生児が心臓病を患って、先程話しました生後1~3日の新生児でございますが、私どもの医療レベルを頼って搬送されてきたわけでありますが、こういうお子さんはこども病院でお産していただいたほうがいいのではないかと思います。何よりも安全だからです。もう一つ追加しますと、平成19年度、90名の新生児が東区から搬送されてきていると申し上げましたが、そのうちの約半数約48名は九州大学付属病院からの搬送でございます。
【記者解説】
10分あまりに及ぶやりとりは以上で終わりだが、「急患が出たらみんな子ども病院に来られると勘違いされては困るんです」。久保田医師のこの最後の言葉が人工島移転の問題点の全てを表していよう。それでも、周産期医療は救急医療だという特質がわからない福重院長は「勘違いではない」と言い張り、昨年度、東区からも相当数の新生児が搬送されていることを強調する。恐らく、「東区から中央区へこれだけの搬送があるのならば、逆もまた然りだろう」と言いたかったのであろう。時間の都合上、久保田医師の反論は聞けなかったが、もし、時間があればこう言ったに違いない。「それは、こども病院が現在地にあるからです」と。
【日下部晃志】
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