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新興不動産会社を襲った スルガコーポレーション・ショック(下) | 東京レポート
特別取材
2008年7月23日 09:30

都心の不動産バブル

 東京の不動産市場が動き出したのは、90年代の後半からだ。その要因のひとつは、不動産ファンドの急増である。金融機関が不良債権となった担保物件を売却したことにより、その物件を購入する海外の不動産ファンドが増え始めた。その後、国内の不動産ファンドも登場。国内外のファンドがオフィスビルやマンションを買いあさった。こうしたファンドの旺盛な需要を満たすために、不動産開発業者は物件の取得を競った。

 これにより地価は上昇。ここ数年、都心の一等地は狂乱地価とも言える状況である。80年代後半の「平成バブル」と似た構図が再現された。オフィスビルやマンションの買いあさりが活発化するにつれて、バブル崩壊とともに姿を消した地上げ屋が再び息を吹き返した。

 スルガ社事件の舞台となった「秀和紀尾井町TBRビル」は、その典型だ。ビルの所有権は商業ビル経営の(株)秀和からモルガン信託銀行に移り、05年9月、スルガ社が約275億円で買収。スルガ社は、暴力団と深い関係を持つ光誉実業(株)に地上げを委託した。

 スルガ社は、地上げが完了したビルを07年9月までに解体。更地にした後、約365億円の高値で転売した。中央三井信託銀行が受託者となり、信託受益権は商業施設開発の(株)アーバンコーポレイション(広島市)のSPC(特定目的会社)に売却。SPCは、その物件を裏付けに証券を発行して資金調達を行なう法人。アーバン社は、物件ごとにSPCを設立しており、「不動産の流動化(=証券化)」という手法で急成長した会社だ。
 このビルをめぐっては、都心バブルの象徴とも言える土地転がしが行なわれたのだ。

宴の終わり

 「秀和紀尾井町TBRビル」を舞台とした地上げに捜査のメスが入ったため、新興不動産会社はパニックに襲われた。スルガ社だけが例外ではないのだ。
 証券市場では、「USA」とか「横浜3L」といった言葉が飛び交う。新興不動産会社の頭文字からとった危ない会社である。スルガ社が民事再生法の適用を申請したことを受けて、新興不動産会社の株価は軒並み暴落した。

 6月の月間値下がり率ランキングには、スルガ社をはじめ、ランドコム(株)(横浜市、東証2部)、(株)ゼファー(東京・中央区、東証1部)、(株)アルデプロ(東京・新宿区、東証マザーズ)、(株)アーバンコーポレイション(広島市、東証1部)、(株)エリアクエスト(東京・新宿区、東証マザーズ)、(株)アイディーユー(大阪市、東証マザーズ)など、何かと話題にこと欠かないカタカナ社名の新興不動産会社が名を連ねている。

 はっきりしているのは、反社会的勢力の資金源を断つために、不動産マネーの蛇口が一気に絞り込まれたということだ。ビルの地上げや土地転がしにより、巨額の利益が転がり込んできた宴は終わったのである。

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