吉田宏市長が福岡市立こども病院を人工島に移転する根拠としている「検証・検討」について、現地建替えのデメリットばかりを強調させた「移転ありき」の結論を出すための報告書作りがされていた実態が明らかになった。
現地建替えは初めから排除
委託された業者が報告書で、現地で建替える場合のシミュレーションを作成する前提として、「メリットがあるプランとは言えないものであることを明らかにする」などと記している。移転先の適地を人工島に誘導しようとする報告書だったことを裏付ける資料と言える。
報告書は市が東京に本社を置く企業に委託した「福岡市立病院経営分析報告書」。この中で、こども病院を現地で建替える場合のシミュレーションを実施しており、市が人工島を適地とする要素となっている。
驚くのはその項目の「はじめに」に記されたシミュレーションの基本方針だ。以下に抜粋した。
1.既存建物改修工事に伴って診療機能の停止や部分的な休止が不可欠なことを明らかにすることによって、メリットがあるプランとは言えないものであることを明らかにすること
2.現在地が持つ制約条件や診療を継続しながらの建替え計画に付随する諸問題を明らかにすることにより、理想から程遠い病院にならざるを得ないことを明らかにすること
これでは、現地建替えを初めから排除し、「移転ありき」の結論を導くために作られた報告書であることは明らかだ。
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現地建替え 85億5千万円が128億3千万円に
さらに驚くべきは、業者が提出した報告書では、現地立替工事費を85億5千万円と算出していたものを、市が作成した「検証・検討」報告書では、128億3千万円とふくらませていた。
増額分の42億8千万円については、現在のこども病院を解体するローリング費用としているが、その算出根拠は何も示されていない。
人工島移転にかかる土地取得費用(60億円以上ともされる)には触れず、現地建替えを排除するため、都合のいい数字に組み替えていた。
業者が市に提出した報告書 | 福岡市による「検証検討」報告書 |
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