品質へこだわり続ける地場老舗の印刷会社
職人の目を持った印刷のプロフェッショナル集団
「活字は、よく使う文字が近くにあって、それを組んでいきます・・・」活字の話をする藤村社長の目は輝いていた。それは、職人の目だ。今では殆どの印刷がデジタルで行われる。しかし、時代は変わっても、正光印刷には、活字の職人の気骨が残っている。職人の目を持った印刷のプロフェッショナル集団である。
正光印刷の創業は、大正10年。86年の歴史を誇る県内でも老舗の印刷会社である。特に活字印刷では、地方出版に知られた存在で、多くの書籍を世に送り出してきた。また、鹿児島、熊本、長崎、佐賀などからの注文も多く、その技術力の高さは、地場でも一目置かれる存在だ。
他の印刷会社がデジタル化を進める中、平成3年まで活字印刷を行っていたのも、活字に関するこだわりがあったからだ。当社も、本格的にデジタルを導入し、諸官庁関係の印刷物、広告代理店・出版・機関紙など、幅広い分野の印刷を手がけているが、基本となるのは、活字印刷の時代から続く品質へのこだわりだ。デジタルの導入は、低コスト、省力化を目的としているのではない。アナログの技術では表現できない品質を追及している。
デジタル印刷は、誰が作っても、同じレベルで仕上がるように見える。しかし、そこには、86年の歴史に培われた職人、正光印刷の目が光っている。確かに採算の面では、苦しい状態が続いたが、それでも、「品質は落とさない」そんな思いが、今日の発展を支えてきた。
先の時代まで残る印刷物を作る
籐村社長は、博多区古門戸町に生まれ、その後中央区赤坂へ移る。博多生まれの福岡育ちだ。郷土への思い入れも、人一倍深い。そんな社長が、気がかりなのは、福岡の水の問題。水は、市民生活はもちろん、あらゆる企業にとっても大切な存在だ。「福岡は、全国でも珍しい2級河川を持つ100万都市です。水の問題は、いつまでも筑後川の水に頼るわけにはいかない。東区で進められている海水の浄化プラントにも注目しているが、これからは根本的な解決を探っていくべきだろう」そう考えている。また、紙の原料であるパルプは、マレーシアやインドネシアから輸入される時代だ。そうなると森林破壊など、環境問題も、避けて通れない。リサイクル紙材や環境汚染を押さえるインクの利用など、エコロジーに対する提案も続けていきたいと言う。
「この間、テレビを見ていたら、高知で千年持つ和紙を作る人の話を見ました。私も、ずーっと先の時代まで残る印刷物を作りたいですね。そのためには、ためになるものを作らなければならないと思います」その言葉は、地場老舗の印刷会社だから言えることかもしれない。
[プロフィール]
藤村 省介(ふじむら しょうすけ)
昭和8年福岡市生まれ。福岡大学卒業後、家業の正光印刷に入社。
昭和41年、2代目社長に就任
日本タンゴ・アカデミー会員。福岡大学七隈写友会顧問。
会社住所:福岡市西区周船寺3-28-1
TEL:092-806-5708
URL:http://www.seikoprinting.co.jp
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