福岡市の吉田宏市長は4日、福岡県庁を訪れ、麻生渡県知事に都市高速の人工島乗り入れの要望書を提出した。事実上、県に建設費負担を求めたことになる。人工島への移転を正式表明したこども病院の患者家族や市民から「アクセスが悪い」と批判が噴出しているため、対策をアピールする狙いがうかがえる。市長が知事に対し、正式に都市高速道路の乗り入れを要望するのは初めて。
都市高の乗り入れは、こども病院の人工島移転を発表した会見の際に、アクセス対策の一つとして市が打ち出した。「人工島はアクセスが悪い」との批判をかわそうと、市が苦肉の策としてぶち上げた構想だ。その後、市は都市高乗り入れを“東部地域全体のため”と強調するようになった。
「ほかの候補地よりも安い」。それがこども病院の人工島移転を決めた理由の1つだった。しかし、都市高延伸分の予算も含めれば、注ぎ込む予算は3百億円以上増すことになる。「東部地域全体」を強調しているのは、そうした批判をかわそうという狙いもある。
また市は、都市高の延伸について、これまで県や関係機関とほとんど事前協議をしてこなかった。記者会見でぶち上げる市長の構想だけが一人歩きしていたため、当事者になるはずの県職員も、「市の構想でしょ。情報は新聞情報だけ。こっちが中身を聞きたいくらい」とまるで他人事だった。(既報)
今回の市長のパフォーマンスに、麻生知事は「検討しましょう」と応じたという。首長同士が面会して要望書を受け取ったことで、県は「検討」という段階には入らざるを得なくなったが、多額の負担をすんなりと受け入れられるかどうか、不安定要因も多い。市住宅都市局の担当者は「これで県が動いてくれれば」と期待していたが、報じてきたように、「幹線道路協議会」での議論等を経なければならず、実現には5~6年かかるとされる。
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