8月5日付け読売新聞は、国土交通省がこれまで示していた海上空港新設6案のうち、新宮町沿岸に配置する案に絞り込んだと報じた。国交省は6月末に現空港の増設案と新設配置案を発表しているが、新設案は志賀島・奈多ゾーンの4案と三苫・新宮ゾーンの2案で、今回絞り込まれた案は新宮町沖案の沿岸に近い水深約12メートルの位置である。
報道によれば、新宮沿岸案の利点は平均水深が約12メートルと最も浅く埋め立てコストが低く抑えられること、福岡市と新宮町を結ぶ西鉄貝塚線の活用などの交通アクセスが整備しやすいこととされている。新空港は、長さ3,000メートルの滑走路2本を300メートル間隔で並べる計画。離発着回数(滑走路処理容量)は、21.3~22.6万回、事業費は9,000億円ほどになるという。
また、現空港の増設案については、西側210メートル案が最有力としている。その理由として、事業費が2,000億円程度で他の2案よりも安く、滑走路処理容量も年間18.3~19.7万回で他の2案とそう変わらないことが挙げられている。
今回報道された内容について、国交省九州地方整備局(空港PT室)に問い合わせたが、「報道内容についてはいっさい知らされていない。東京でいろんな案が検討されているがこれで固まったかどうかはわからない」と答えた。福岡県の空港対策局も、「この内容について国から何の連絡もない」と、この案で固まっているどうかについて回答のしようがない、とのことである。今週中には国交省専門委員会が開かれることになっているので、いずれにしても新設、増設案がそれぞれ1案に絞り込まれ、ステップ4で議論されていくことになる。
「新宮沿岸」という報道の真偽はともかく、「新宮沿岸」案が難点を抱えていることは間違いない。ひとつは、事業費を押さえることにより新宮町沿岸に近接することになり、玄海国定公園の特別地域との関係が出てくるだろう。環境問題の観点からの批判が出そうである。ふたつめは、昨今の航空需要の変化である。原油の高騰などもあり減便や廃止が相次いでいる。人口減少社会に突入していくなかで新空港に巨額の費用を注ぎ込むことの是非が問われそうだ。
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