俺でも判断したかも
弊社の社員で中央区のマンションに居住する者がいる。3年前までそのマンション管理組合の理事長をしていたそうだ。理事会があるたびに毎月増える管理修繕積立金を眺めつつ「この資金の有効な利殖法はないものか」と議論をしていたそうである。いろいろなアイデアはでるが、なかなか運用用途に関する具体的な決定がなされなかった。その経験を踏まえて元理事長経験者が、今回の丸美によるホテル会員権売買に関して、その心境を語る。
「もし信用していた丸美の社員からホテルを利用するための会員権の誘いがあったら、応じていたかもしれない。積立修繕費が前向きに活用されるとなれば、マンション居住者のために討議にかけて、積極的に説得にかかったと思う。あるマンション組合は6,000万円を捻出したという噂話を耳にしたが、そのマンション組合の理事長は針の筵(むしろ)に座った感じであろう。恐らく責任追及を受けることになる。俺だってその奈落に落ちていた可能性もあった。おークワバラ、クワバラ」と首をすくめる。
また一方で、集めた社債・不動産ファンドの債権額が46億円、債権者数994名に達しているケースであるが、この資金対象者は、一部ではマンション居住組合を経由する場合と重複していることもある。ただこちらの場合、主力はグリーンシート市場で知り合ったお客のようである。
丸美が2004年10月に福岡証券取引所におけるグリーンシートの登録をしたことは、このシリーズの(5)で触れた。同社には小口の株主が群がってきた。この小口投資家に営業がアタックをして、功を奏したようだ。金丸氏の資金調達術の手練は見事、天晴れ!! この資金を慎重かつ有意義に投資すれば、最悪の破綻に至る道を辿らなかったのだが。
資金集めが場当たり的なら、返還もまた場当たり的
丸美の民事再生法申立書によると「2004年に購入したロマネスクリゾート『菊南』に60億円の設備投資をした」となっている。この記述からよーく読み取れることは、金丸氏が資金集めに奔走していたことだ。ホテル会員権の資金調達案については、身近なブレーンによる助言もあったかもしれないが、基本的には本人が考案したのであろう。そして安易に得意先であるマンション居住者にターゲットを絞ったのだ。
申立書には別の記載がある。「2007年からリゾート会員権の退会が相次ぐこととなり、そのために本業の利益を圧迫するようになった」と。ここでもよーく読み取ることができる。大きな声をだして「金を返せ!!」と迫ってきた者から順番に、場当たり的に現金化し返済をしていたのだ。2008年3、4月は、マンション販売に要した資金の回収時期であった。「110戸以上を販売した場合の資金回収金額は27億~29億円あった」と耳にする。この刈入時に、施工してくれた真柄建設への手形決済資金が不足していたそうだ。これは入金があったならば、場当たり的に会員権買取資金に充当していたことを物語っている。そして申立書の結論としては、「90%カットしていただきたい」と記述してある。
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