後発組の淘汰ラッシュ
アーバンコーポレイションの倒産の負債額2,500億円には驚いたが、1990年5月の設立から18年という業歴の浅さを知って、さらに愕然とした。「よくまー、これだけの借り入れができたものだ」と。また、倒産したスルガコーポレーションの設立からも、日が浅い。言うなればこの2社の倒産は、不動産バブルが弾けて以降、急成長した新興勢力(以後、『1993年以降組』と称する)の破綻を象徴するものである。8月末まで更なるデベの倒産が続出することが予測されるが、恐らく倒産企業の大半はこの『1993年以降組』であるだろう。
だからこそ表現を変えれば、「全国規模で『1993年以降組』の淘汰が本格化した」と言える。その全国規模の流れに沿って、九州・福岡で「丸美、インベストの倒産が発生した」という脈絡で捉えることが重要だ。「先輩の企業(第一期バブル組)で生き抜くことができるのは、新栄住宅だけ」と度々、論評をした。こんどは『1993年以降組』が淘汰される運命にあるのである。インベスト倒産の教訓で触れたように、同社の設立は1993年である。丸美の場合、設立は1993年をはるかに遡る1976年であるが、デベとして本格的に活動を開始しだしたのは1993年以降なのだ。福岡においてもこの『1993年以降組』の半分が消滅されると断言してよい。そのシンボルが丸美の倒産なのである。
人間の性根というものには、「自分が痛い経験をしないと」本質を会得できない哀れな習性がある。先輩たちが1993年までに被った痛手(大半は倒産)を全然、教訓化できないでいる。その『1993年以降組』の中でも、理研ハウスの動きは異色だ。同社の新井社長は直方の物件の売れ行きが計画通りに進まないのを見て、「流れが根本的にチェンジした」と直感して事業を停止した。新井氏は撤退できる唯一の経営者であったのだ(金丸氏の猪突猛進型の経営手法は度々、紹介した)。以前において、理研ハウスと丸美の間には、「丸美が事業主、理研ハウスが販売代理」という力関係にある時期があった。2社の関係はまさしく栄枯盛衰の象徴、主客転倒の見本だ。あー無常なり。
犯罪絡みに発展か?
『1993年以降組』倒産の特徴の一つは、規模が小粒になったことだ。アーバンコーポレイションでも2,500億円の負債である。先輩たちの時代には1兆円規模の倒産があった。九州においても丸美の200億円の負債額にはショックを受けるが、以前の時代には1,000億円規模の倒産もあった。この水準に到達するケースは今回はまず出現しないであろう。おそらく今回の不動産バブルは、局地的であったことを物語っている。
第二の特徴は、犯罪絡みに発展することだ。アーバンコーポレイション、スルガコーポレーションの倒産の場合には、暴力団・闇勢力の関係が取り沙汰されていた。そこで当局は締め付けに乗り出し、金融機関がその意向を汲んで融資を絞り込んだと言われている。前期時代と比較すると、社会の価値観も厳しくなってきた。だが、短期間に地上げを数多くするには、闇の勢力の力を必要とする局面が発生することもある。上記の2社は締め付けに嵌ってしまった。
丸美・インベストの場合には、裏組織との連なりが云々されるのでなく、資金調達の件で事件に発展する可能性が残されている。特に丸美の場合には、ホテル会員権で個人からの資金調達を図ったが、債権者からは今後、厳しい追及の火の手が上がるだろう。前期時代(前バブル時代)、先輩たちの中には塀の中で暮らした方も居られた。残念ながらこの教訓が生かされていないのだ。 つづく
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