社名:(株)宮崎銀行
本店:宮崎市橘通東4-3-5 設立:1932年7月 資本金:106億6,281万円 業種:普通銀行業務・外国為替業務・投資信託業務・代理店業務ほか 拠点:国内本店89/出張所8 総資産:1兆8,497億円 純資産:858億円 |
宮崎の雄であった地場トップゼネコン・(株)志多組(宮崎市)が、8月8日、東京地裁に民事再生法の適用を申請して負債総額278億8,200万円で破綻。メインバンクであった宮崎銀行は、同社の業容悪化を支えきれなかった。
裁判所提出資料によると、宮崎銀行は志多組に対して70億9,700万円という巨額な不良債権が発生、66億3,100万円(内43億円は無担保)が回収不能となることが判明した。また、今年5月にはジャスダック上場の(株)アリサカ(本社:宮崎市)に、6月にも宮崎県三股町の(株)渕脇組に巨額の焦げ付きが相次いで発生したため、7月15日に09年3月期の業績予想を大幅に下方修正し、それでも8億円の黒字と予想していた。しかし、今回の志多組の倒産で再度下方修正され、創業以来初となる75億円の赤字になる見通しだ。今後、連鎖による取引先の破綻が増えれば、業績の下方修正も続くことになり、宮崎銀行の経営能力が問われることになるだろう。
志多組倒産は影響大
全国でも売上高上位100社以内に入る企業規模を有していた、宮崎県内最大手のゼネコン・(株)志多組が、8月8日に東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日保全命令を受けた。債権額が100万円以上の企業だけでも506社、負債総額は278億8,200万円と巨額であった。
宮崎県および九州圏内では、公共工事抑制や大型建築工事の減少などで受注も限られていたため、同社が得意とする首都圏での中小型マンション建設に力を入れてきた。東京の不動産市場はファンドマネーの流入で活況を呈していたが、昨年6月の改正建築基準法、7月以降のアメリカのサブプライムローン問題などから、一気に悪化。さらに、原油価格高騰から原材料の値段が上がり、業者間との価格競争も激化するなか、同社は採算性を度外視した受注確保に傾注、結果的に未回収金が増加していた。追い討ちをかけるように、(株)青木不動産(東京都立川市、6月2日に破産手続開始申請)、(株)ケイエスシー(東京都中央区、6月30日に破産手続開始申請)の2社で約25億円の焦付きが発生し、資金繰りが急速に悪化した。
以後、同社のメインバンクである宮崎銀行を軸とする金融団で、救済策を協議してきたが、結局は撤退する銀行などもあり、足並みが揃わないまま追加融資は決まらなかった。さらに、宮崎銀行は志多組本社に6人、東京支店に1人を送り込み、弁護士立会いのもとで内部調査を1週間近く行なったが、最終的には支援は決まらず、先月の業容不安が噴出した。結果的に、7月10日以降から翌月の“Xデー”と言われていた8月8日(同社指定支払日8月11日)、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。
宮崎銀行は、同社への融資額が30億円弱(07年3月期)から、08年度に入り、70億9,700万円(裁判所提出資料の債権金額)にまで膨れていたことや、5月から6月にかけて同行と取引する3社が相次いで倒産し、総額で約46億9,900万円となる巨額の不良債権が発生していたことなどから、1行だけでの融資支援は限界となった模様だ。
(私見だが)ここ数年の財務表を見ると、現金預金が約3億円とわずかしかないなか、返済金額は手形だけでも毎月12~15億円を必要としており、工事回収金に依存、それで賄えない分は借入金で支払うという自転車操業に陥っていたことは把握していたと思われるが…。
当然、今回のように25億円もの不良債権が発生すれば、すぐに資金不足に陥ることは分かっていたはず。倒産する前に、規模縮小、20名以上いた役員の縮小、従業員のリストラ策などの対処はできなかったのか。あくまで個人的な見解だが、こういった策をメインバンクの宮崎銀行が強く打ち出していたら、今回の事態は避けられたのでは。
同社の倒産は、地域経済を揺さぶるほどに影響力が強い。関係者内では、宮崎銀行が支えるだろうと楽観視していたことは否定できないが。
宮崎に本社を置く全国中位の地方銀行に成長
宮崎銀行は、1932年7月に日向興業銀行として設立(資本金200万円)。62年8月に、行名を宮崎銀行に変更。75年10月には福岡証券取引所に上場を果たし、86年10月に東京証券取引所および大阪証券取引所に上場している。現在では、本店を置く宮崎県内をはじめ、鹿児島県には営業部ほか4店を置くなど、地盤として重視している。このほか、大分県、熊本県、東京都に各1店舗を有し、国内中位の地方銀行として成長している。
また、08年6月の株主総会で前佐藤勇夫頭取(在任期間7年)が代表権を会長に、小池光一副頭取が頭取(日本銀行出身)に就任したばかりであった。だが、小池新頭取が就任2カ月で113億円もの不良債権が発生したことで、一気に試練場に立たされることとなった。
今のところ、地元での宮崎銀行に対するバッシングは強くはないが、志多組に焦げ付いた業者間の一部で不満の声も聞かれ、同行に限らず、銀行筋の信頼度は落ちてきているのが実情とも言える。しかし、中小企業が大半を占める宮崎県において、銀行を頼らなくては事業を維持することができない、過少資本の企業が余りにも多いと言える。
巨額不良債権発生が相次ぐ
今年5月28日、ジャスダック証券取引所に上場していたアミューズメント施設経営・(株)アリサカ(宮崎市)が宮崎地裁に会社更生法の適用を申請して事実上倒産、宮崎銀行では約27億円の不良債権が発生していた。また、6月17日に事業を停止した田島コンクリート工業(株)(鹿児島県薩摩川内市)に対し約2億8,200万円が事実上焦げ付き、さらに6月30日には、土木・建築工事業の(株)渕脇組(宮崎県三股町)が民事再生法の適用を申請、約17億1,700万円の焦げ付きが発生したことで、7月15日には09年3月期の業績予想を大幅に下方修正し、約8億円の黒字と見込んでいた。
しかし8月に入り、志多組(宮崎市)が倒産。宮崎銀行は、さらに66億3,100万円の不良債権が発生し、焦げ付きが113億3,000万円にまで膨張したため、再度の下方修正(表を参照)を余儀なくされ、創業以来初の約75億円の当期損失となる見通しを発表した。
これにより、年初504円だった宮崎銀行株にも異変が生じ、志多組不安説の流布以来、民事再生法申請が公表されるや、一気に株価は急落。8月19日現在で300円を切っている。
また、志多組の関連会社となる、中央コンクリート工業(株)(宮崎市)が同時に民事再生法の適用を申請、さらに資材仕入販売部門の志多商事(株)(宮崎市)が自己破産申請の準備に入っており、負債総額は12億円超が見込まれるなか、宮崎銀行の不良債権はまだまだ増える可能性がある。2度の下方修正がなされているが、今後において連鎖倒産の続発も推察されており、業績の見直しが続くことも予想され、純資産云々というよりも首脳陣の経営能力が問われることにもなりかねない。
また、金融機関の融資スタンスも激変しており、九州・沖縄の全産業に対する金融機関の貸出態度は厳しい状況。宮崎銀行も今回の連続した不良債権発生は過去に類を見ないもので、支援融資のさらなる厳格化が図られるだろう。
単体業績予想の修正
(1)2009年3月期上期(2008/4~2008/9) (単位:百万円) | |||
経常収益 |
経常利益 |
中間純利益 |
|
前回発表予想(A) | 22,000 |
▲3,500 |
▲2,000 |
今回修正予想(B) | 22,000 |
▲11,500 |
▲8,500 |
増減額 (B-A) | - |
▲8,000 |
▲6,500 |
増減率 (%) | - |
▲228.6 |
▲325.0 |
前期実績(2007年9月期) | 23,672 |
3,139 |
1,717 |
(2)2008年4月1日~2009年3月31日 (単位:百万円) | |||
経常収益 |
経常利益 |
中間純利益 |
|
前回発表予定(A) | 44,000 |
1,000 |
800 |
今回修正予定(B) | 44,000 |
▲9,500 |
▲7,500 |
増減額 (B-A) | - |
▲10,500 |
▲8,300 |
増減率 (%) | - |
▲1,050.0 |
▲1,037.5 |
前期実績(2008年3月期) | 53,261 |
4,184 |
2,268 |
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