データ・マックス取材班が入手した一連の「業務委託報告書」は、こども病院の移転先がはじめから人工島に決まっていたことを明確に示している。同時に、人工島事業「検証・検討」が市民を欺く茶番だったことも明らかとなった。
検証・検討チームが業務委託した「福岡市立病院経営分析報告書」では、同病院の現地建替えシミュレーションを行なっていたが、現地建替えを否定するためのシミュレーションであることが明記されていた。市民向けの「検証・検討」報告では、このシミュレーションの工事費をさらに40億円以上水増しし、市民には「財政負担が大きい」ため現地建替えはむずかしいと嘘をついていた。また、移転の場合の新築工事費についても、根拠のない数字を公表している。
これだけでも茶番の証拠としては十分だろうが、今年1月から3月にかけて市保健福祉局が業務委託して作らせていた「平成19年度福岡市病院事業アドバイザー業務委託報告書」では、起債協議のため総務省に提出する資料が含まれていた。
「総務省協議の事前準備の支援」と記されたその文書の目次を見ていただきたい。
これらの項目はすべて「人工島」を前提に作成されたものである。
すでに報じたように、敷地面積に関してのページでは、移転場所を人工島に想定して検討するとしたうえに、取得面積の理想を「40,000m2(4ヘクタール)」と断定している。保守系会派と市側が進めてきたとされる「4ヘクタールの闇交渉」を証明するかのような文書である。
見えてきた「利権の構図」
さらに、同文書の14ページには「初期投資」の試算として、人工島への移転新築費用として約192億円が計上されていた。都市高速延伸のための費用(300億円とも400億円ともいわれる)と合わせれば、最大600億円が投入される事業となる。
「はじめに人工島ありき」が見事に証明されたばかりか、巨額な公共事業=利権の構図にさえ見えはじめた。患者家族だけの問題として捉えられがちなこども病院問題だが、実は市民の税金を使った「政・官・業の癒着」を支持するかどうかを選択する重要な問題なのである。
福岡市民は、大型開発に対するある種の「胡散臭さ」を察知し、桑原、山崎と2代の市政に「NO」を突きつけた。これを痛烈に批判して登場した吉田宏氏が、「市民の声を聞き」「大型開発にストップをかける」と訴えたことが、選挙の時だけの「嘘八百」だったとしたらどうなるだろう。そうであるなら、福岡市民は不幸である。
取材班は、「業務委託報告書」が語る「検証・検討」の欺瞞について、徹底的に検証していく。そのことが、市民や議会の正常な選択の一助となることを信じたい。