うっ積した恨みが引き金に
みずほ内では誰もが齋藤氏の責任だと感じていた。海外業務や証券化業務の積極的な旗振り役は彼だったからだ。ところが、本人はまるで気にする風ではない。それどころか、「来年の株主総会では自身は会長に昇格し、子飼いの部下を後任の頭取に引き上げ、院政を敷こうと考えている」(みずほ関係者)と言う。
みずほフィナンシャルグループが新たに導入したインセンティブ賞与制度も火に油を注ぐかたちとなった。実績を出した部門にボーナスを追加する仕組みで、行員への能力給的な意味合いを持つ。欧米の投資銀行が画一的な賃金体系ではなく、儲けた人にそれだけ報いる仕組みをとっているため、それを真似たのだろう。
問題は、黒字のみずほ銀行(リテール部門)にはこの賞与が支給されなかったにもかかわらず、サブプライム損失で赤字を出したみずほコーポレート銀行(法人部門)には支給されたことである。「結局、齋藤さんは自分の部下たちには手厚い」、そんな怨嗟の声が、人事上で差別されている旧第一勧業銀行出身者を中心に巻き起こった。
公的資金注入の際、みずほは役員の報酬を大幅に下げている。それまで6,000万円程度だった頭取の報酬は一時3,000万円台にまで下がった。だが、それも昨年には7,000万円にまで戻している。自身と自身の子飼いの部下へのお手盛りと言われても仕方がない。女性にもてるだけでなく、そうした人事・給与・待遇に対する行員の恨みつらみが、齋藤氏の品行を暴露するという陰湿な行為へとつながったのであろう。齋藤氏は自身が使う専用車を社有車から個人ハイヤー業者に変えたようである。不品行や業績の悪化以上に、「俺の日程が漏れる」ことを気にしているらしい。