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【倒産を追う/(株)明林堂書店(5)】 万引き防止PRに反した出版社側の冷ややかな対応
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2008年9月 2日 09:30

書店業界を取り巻く厳しい現実は、万引きの多さである。新聞報道によれば、経済産業省が02年に全国の約1,400店舗から回答を得てまとめた実態調査では、1店舗あたりの 万引きの年平均被害額は211万円だった。

 書店経営を圧迫する状況に耐えかねた同組合が、県警の助力を得て考案したのが2006年に導入された魚のマンボウを描いた「まんぼうシール」だった。新古書店に対し、シールのない本を買い取らないよう求めてきたのだが、表紙を汚されるなどの理由により、お客さんの不評を買い、10月末で廃止に追い込まれた。書店が1冊の本を販売して得られる利益は本体価格の2割から3割。そこから人件費、光熱費などの経費の捻出を行なわなければならない。

 例えば300円の本を売ると、1冊あたり60円から80円位の儲けしか出ない。まさに薄利多売であり、本が売れない時代の現在では、万引きは頭の痛い問題だ。しかし、そのような書店の苦悩に対し、まんぼうシールが導入された際、出版社の反応は冷ややかだった。それはお客さんの不評と同じく、表紙を汚される事で商品価値が下がってしまうこととしていた。だが、それは建前であり、本音のところは、“書店で万引きされようがされまいが会社の売上に関係ないからメリットのないことはしない”という事だった。

 万引き分は基本的に書店負担になるため、出版社には影響がない。書店の置かれる厳しい現状と出版社の私利私欲とが、違う方向のベクトルとなっていったことが、出版不況をさらに深刻化させる事態に追いやったといっても過言ではない。今回の明林堂の民事再生法の適用申請はまさに氷山の一角であり、このような厳しい店舗は潜在的に多数あると思われる。まずは書店業界、出版業界が対話を行ない、お互いにタッグを組み、様々な諸問題を解決することが、書籍不況を打開する事につながるのではなかろうか?


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