「利権構造の変化」指摘する声も
ベッド数増床や都市高速延伸など、県によるこども病院人工島移転への協力と引きかえに、「コンベンションセンター・県立美術館・旧県立女子大学」の3点セット新設・移設のため「人工島」の市有地を格安で提供する。この話は、ここ数ヶ月のさまざまな動きと一本の線でつながっていた。
今年6月、新聞紙上で麻生知事や県議団が「ブラジル日本移民百周年記念式典」訪問のため出張。一部県議団が視察のためニューヨーク等に移動し、美術館等をまわり1,000万円もの公費支出が行なわれていたことが報じられた。
実はこの折、県議団は世界最大級のニューヨークのジャコブ・K・ジャビッツ・コンベンションセンターやメトロポリタン美術館などを歴訪していた。決して観光のためではなく、「県政の課題」としてコンベンションセンター建設や美術館の建て替えが浮上していたためである。
ジャコブ・K・ジャビッツ・コンベンションセンターは総ガラス張り、約8万平方メートルもの展示面積を誇る世界最大級の施設である。東京ビッグサイトは今や東京の顔のひとつだが、ジャコブ・K・ジャビッツ・コンベンションセンターもニューヨークを代表する施設として知られる。メトロポリタンといえば「美術館」の代名詞として連想されるほど知られた存在であり、県議団が訪れたもうひとつのグッゲンハイム美術館はその特異な外観に特徴がある。
いずれも「広大な敷地面積」を誇る施設ばかりである。「県が目指す方向性」が見えてくるのではないだろうか。新聞報道の行間からは「観光目的の公費出張」といった批判的な部分が目立っていたが、実は県政の課題の方向性を探る公費出張だったことがうかがえる。そして、この方向性は広大な土地を有する「人工島」、こども病院問題で迷走する吉田市政と交わることになる。
県議の動き顕在化 = 利権構造の変化
8月、弊社取材班は、一部県議が福岡市の港湾局関係者などと接触している事実をキャッチしていた。「巨大コンベンションセンター」の建設計画について報じたMAX市政ニュースはこうした動きをとらえてのものだったが、美術館、大学まで「人工島」に移設するという情報はこの1週間ほどの間に顕在化したものである。そして、その動きに関して複数の県議の名前が登場する。
ある市関係者によると、県議が人工島事業に深く関与してくることは、「利権構造の変化」を意味するという。
福岡市は政令市である。市の予算は県から独立しており、県から細かな注文をつけられることもない独立大国である。県とは「対等」の意識が強い。福岡・北九州の両政令市の人口だけで230万人を超えており、県人口の半数近くを占める。強大といわれる県知事の権限が及ばない「県」の一部なのである。市議会議員の給与も県議とほぼ同水準であり、福岡市政のことに県議が立ち入ることは、長く否定的に見られてきた。「政令市に県議は要らない」と断言する政界関係者は少なくない。当然、市の利権は市議が握ってきたという歴史がある。
3点セットと人工島・こども病院の駆け引きから見えてくるのは「県議会の利権」であり、そこに市議が入り込む余地はないと言われている。「利権構造の変化」と喝破した市関係者の言葉は、このことを指しているのである。
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