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コダマの核心

妥協心なき上村建設の組織再編 一世紀耐えられる企業への挑戦(下)
コダマの核心
2008年9月10日 09:35

リニューアル時代への対応

 30年以上前に建てたアパートの建て替え需要が増えてきた。チャンスはいくらでもあるが、顧客の意識が変わってきており、30年も経過すれば顧客も代がわりをしている。昔の施主は5億、10億の借金を気にせず借家事業に敢然と挑んだ。ところが最近の2代目、3代目の施主は大きな投資を敬遠気味だ。勢い、小所帯のアパート物件の発注が増えた。この顧客の意識の変化に対応するために「ステラシリーズ」を開発・販売してきた。9戸、12戸のアパートの対策商品が功を奏している。時代にマッチした証明であろう。上村社長には「今の時期は大型物件を追い求めるよりも現場の数を多く取ることが先決だ」という認識がある。小ロット受注に、さらに磨きをかけるようだ。

 加えること新たな試みとして、改修工事に力点を置いてきている。それは単なる既存顧客への物件リニューアルの営業にとどまらず、改修工事の分野への殴り込みである。社内でも検討の段階から具体的な市場リサーチに踏み込んで、事業部隊も組織化中だ。従来の顧客に実験的提案もしている。たとえば、「この部屋をリフォームしましょう。そうすれば、家賃がこのくらい増えます。費用はいくらか要りますが、今までの恩返しの気持ちで当方も協力をさせてもらう所存です」と顧客還元をセールスポイントにする。「改修工事の分野は市場拡大する。この領域で勝負できる蓄積が重要だ」という上村社長の戦略に沿って、各担当者たちに勝ち癖を体験させる組織的サポートには余念がない。

若手人材が企業の宝

 ハッピーハウスはストックビジネスの見本というが、関連会社の上村倉庫(株)も忘れてはならない。先代が「請負という一過性ビジネスでなく、ストックビジネスとしては倉庫業がぴったりだ」と閃いて設立したのが同社。ここが保有する敷地は膨大だ。この敷地に事業再構築の物件を建てる計画はあるが、まだ実行するまでには至っていない。上村建設が改修工事に全力投入するとなれば、いくらでも関連会社から仕事の引き合いがくるグループ余力を残しているのだ。上村社長としては「企業力を温存している間に、50年を超えた先を見通せる抜本的な組織変革のピッチを上げたい」というのが本音だろう。

 どこが潰れてもおかしくない未曾有の危機には、新しい人材が求められる。バブルの良き時代にビジネス体験した世代は、どこか甘さを残している。ゼネコンにとって厳しかったこの5年間で、上村建設は新卒を70名採用した。先発のメンバーは同社の中堅を担おうとしている。あと3年もすれば、新卒組が過半数を占めるようになる。彼らは上村建設の理念を叩き込まれて新たな時代の建設業を牽引する使命感に燃えている。上村社長が大いに誇る。「会社にとって何が大切か。100億円の現金よりもやる気のある若手社員集団のほうが100倍大切だ。この5年間、新卒を採用することに注力してきたが、この人材たちが我が社の将来を築いてくれると自慢できる」と。

 2008年10月期も完工高は200億円を超える勢いである同社。その企業を引っ張る上村社長には、現状に満足するような妥協心は一切ない。常に危機感をもち、経営改革に先手先手を打っていく上村建設には死角はない。


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