こども病院人工島移転の是非を問う福岡市議会9月定例会は、12日からの予定である。しかし、注目された議会での論戦を前に、保守系会派のみらい福岡と自民党市議団が相次いで「市長案に賛成」の意思表示をしてしまった。
期待される「議論」を行なうことなく、テレビや新聞の取材に対し、会派として「市長案を否決せず」の結論を表明してしまうのなら、わざわざ12日から税金を使って議会を開催する意味は全くない。誤解を恐れずに述べれば、市民が期待した議会での論戦は、少数会派の意見開陳の舞台と化してしまう。消化試合といっても過言ではあるまい。
議会人が開会前に態度を決めることがすべて悪だとは言わない。しかし、これだけ市民の注目を集める議案について、市民からは見えないところで結論を出すのであれば、市議自らが議会の権威を失墜させていることになる。そもそも、自民党市議団やみらい福岡といった会派は、民主党と対峙する政党の人間ではないのか。吉田宏氏はその民主党が推薦して誕生させた市長である。
もちろん、市長選で山崎前市長を擁し、一敗地にまみれたのだから、自民党市議団やみらい福岡は、「市議会野党」のはずである。吉田民主党市政を厳格にチェックすることに存在価値があるはずだ。それさえ放棄して、「闇交渉」を実証してしまうようでは何のための議席なのかと思いたくもなる。市立病院の「統合移転」を目指すというのなら、それなりの対案を出して戦う姿勢を見せるべきである。現に留守家庭こども会の無料化案が市長案として提出された時は、対案を出して市長案を葬り去っている。
こども病院の建て替えは急務というが、統合移転だから遅れるということはない。自民党市議団の姿勢は極めて分かりづらい。「はじめに人工島ありき」に関しては、市長と呉越同舟だったということだろう。
チェック機能を果たさない議会、市民の声を聞かない議会、密室でことを運ぶ議会・・・。それでよしとする議員にとっては「議席」そのものが「利権」である。「議席利権」はもちろん税金の無駄遣いに直結する。市議会は唯一、市政執行の状況を市民の目の届くところでチェックする「公開の場」である。
市議会議員は「議会での公開の議論」を通じて、市の施策に市民の意見を反映させ、間違った施策は是正させる義務がある。それはあくまでも公開の場でやることであり、密室でことを進めることが許される時代ではなくなっている。吉田市長は、市長選挙の折に「市民の知らないところで、ことが決まるのはよくない」とか、「どこで何が起こっているのかを市民が知らないということはよくない」と発言していた。
しかし、今回のこども病院人工島移転問題は、「検証・検討」の過程から「密室」続きである。最後の舞台「市議会」も市側と保守系会派の「密室」での事前折衝で結論がでてしまった。チェック機能を放棄した議員は、「議席利権」を守るためにバッジをはめているということである。こどもの命がかかる病院の問題に、首を突っ込む資格などあるまい。
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