マスコミ報道のあり方
今回の三笠フーズ騒動で風評被害が拡大している。ある地区では、焼酎などの酒類の他に雷おこし、煎餅等が全く売れなくなるなど米菓の売れ行きにも影響が出ている模様だ。
昨日(9月16日)、農水省が新たに販売先370社の名前を公表したことで、若干買い控えは解消されるとみられるが、次は名前を公表された企業に被害の矛先が向かう。中小零細の菓子メーカーならば事業の存続さえ危ぶまれるところが続出するだろう。
今回、取材した光酒造を始め、事故米が販売された可能性のある酒蔵は5社と報じられた。だが、最初の報道では、社名だけを列記し、米を納入した背景や米を口にした際の体への影響などを報じたマスコミは殆どなかった。このニュースを新聞やテレビで見た消費者の大多数が「酒蔵が利益を出すために意図的にやった」、「業界全体がやってるんじゃないか?」、「もう焼酎や日本酒は怖くて飲めない」などと悪い方に捉えたことだろう。
今回やり玉に上げられた焼酎は乙類に分類され、単式蒸留焼酎と言われる。甲類焼酎のように簡単に出来るものではなく、手間隙かかることから「本格焼酎」と呼ばれ、甲類との違いを説明する酒蔵もある。今回は米を麹菌などの原材料等にしていたとされるが、蒸留酒なので、もし仮に農薬の成分を含んだ事故米を使用していたとしても、蒸留されることで、体への直接的な影響はわずかであるという。取材した記者が酒類業界や流通、焼酎の造り方などについて熟知していたら、報じ方もまた、変わっていたかもしれない。
そもそも新聞には“新聞沙汰”という悪い言葉がある。新聞記事はスペースが限られており、限られた情報の中では、実際に報じられたような事実のみの記載しかできなかったのはわかる。だが報じる立場の者にもう少し配慮があれば、風評被害がここまで拡大しなかったのではないかと考えられる。そう思うと残念に思えてならない。
つづく
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