ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

連載コラム

【人生のエナジーは限りなく】 町金融の世界に生きた男の述懐(14)
連載コラム
2008年9月19日 18:27
井土 芳雄 [いづち・よしお]
1947年7月25日 福岡生まれ
福岡大学 法学部卒業
手形割引を主業務とする市中金融業に勤務
退職後、現在はフリーランスの身となる

手形、そのシステムとは

 手形というシステムがあるお陰で、資本金1,000万円の会社であっても、5,000万円、1億円の商売をすることができる。もし、手形システムがなければ、資本金1,000万円の会社であれば、すぐに資本を喰い尽くして、資金を回転させることができなくなり、商売が成り立たなくなる。
日本の資本主義経済を支えているのは“手形”である、と言っても過言ではない。

 では、“手形”とは、どういうものを指すのか。ここで改めて確認してみよう。事業に携わる人間であれば、手形に関する知識が、商取引上、必要不可欠であることは言うまでもない。常日頃、取り扱っているが故に、“手形”のことについては熟知しているつもりであっても、そのルーツについては、意外と知らないことが多い。
 “手形”とは、一定金額の支払いを約束、または委託することを証した有価証券を指す。古くは証書・証文のことを意味していた。手形という言葉の由来は、証書・証文の紙面上に手に塗った墨を押しつけ、手形を刻してから、相手に手交していたことによると言われる。そうすることによって、固い約束が交わされていることを、明確なかたちで残しておいたのだ。現行のような手形制度は、中世のイタリアおよび地中海沿岸の諸都市で発達したもので、両替商が発行したものに始まるとされる。わが国でも、鎌倉時代にはすでに、割符(さいふ)とよばれる為替手形の一種が使用されていた。
 
 手形と言えば、一般にはさまざまな種類があるように認識されているかもしれないが、法律的には、全て同一の性質を有するものである。ただ、その用途や機能の面から、種々の名称がつけられているにすぎない。
 中でも「商業手形」が最も一般的であり、振出人と受取人との間に商取引があり、その取引代金の支払いにおいて振り出されるのが、「商業手形」だ。
 「融通手形」というものがある。これは振出人の信用を利用して、受取人に融資を受けさせることを目的に振り出す手形のことを指す。
 この他に「貸付手形」がある。これは銀行が、手形貸付に用いる手形である。手形の債務者が振出人だけなので、通常、「単名手形」と呼ばれ、信用度は商業手形より低い。
 また手形が貿易に使用される場合には、「貿易手形」と呼ばれている。
 割引手形は、商取引の代金支払いにおいて、買取人が振り出した金額や支払い時期が明確な複名手形のことを言う。銀行や市中金融が、手形の価額から支払い満期までの利息やその他割引料を差し引いて、手形受取人から買い取った手形のことを指す。
 また手形は、その支払期限により「一覧払手形」「一覧後定期払手形」「日付後定期払手形」「確定日払手形」に分類される。このうち「一覧払手形」は、同手形の所持者は債務者に対し、振り出しの日付より1年以内に支払いを要求しなければならず、債務者は、要求があり次第、直ちに支払いを実行しなければならない。
 このように手形には、実際には様々な種類がある。各種手形を組み合わせることにより、手形の種類は更に複雑なものとなる。したがって、手形の受け取りに際しては、その種類について、重々確認しなければならない。

 井土の勤務した金融会社にも、割引を受けるため、様々な手形が持ち込まれて来たが、時には、一般市民が目にすることができないようなものが持ち込まれてくることもあった。
 その一つが、「選挙手形」と称されるもので、選挙の時期になると、市中に出回るようになる。振出人は、あちこちの土木・建築業者だ。手形の裏書が国会議員になっているもので、候補者を資金的に応援するため、企業が振り出した融通手形のことを指す。候補者が当選すれば、融通手形は落ちる。しかし、落選すれば、不渡りとなってしまう。
 選挙手形の流通には、非常に高いリスクが伴うのは確かだ。しかし、選挙情勢とのからみもあり、様々な情報が飛び交う中で手形流通にかかわることは、かなり面白いものだったと、井土は述懐する。

つづく


※記事へのご意見はこちら

連載コラム一覧
連載コラム
2012年11月27日 07:00
連載コラム
2012年11月26日 15:53
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル