リーマン・ブラザーズ破綻という世界的激震が、今後の地場経済を揺るがすことは間違いない。市場運用に依存していた地方金融機関の損失懸念や銀行間市場の短期金利急騰から資金繰りが著しく悪化する金融機関も決して少なくないであろう。壊滅的金融危機、そして連鎖的な「負の力学」。その渦中において、我々は地場経済の「今とこれから」をどう読むべきか。今後の見通しについて地場5社にお話を伺った。
十分な見極め必要 日本銀行福岡支店
リーマン破綻の九州経済における影響は計り知れないが、方針を決めるのにまだ十分な時間を経ていないため、継続的に情報を収集しながら10月1日の短観発表に向けて見定めを行なっているところ。
実際にサブプライム・ローンの問題が噴出してから現在まで、ある意味で市場が「粘り」を見せたこともあり、強い後退局面にありながらも再び粘りを見せるのか、信用リスクの増大ですぐに影響が及ぶのか、見通しについてはこれから精査してゆく。
地銀をはじめとする金融機関の保有債券の有無確認なども続けているが、適時開示がない印象もあり、一層の不安感が出ていることは否めない。実体経済への影響は少なからずあるだろうし、今後、投機資金がどこに流れていくのか、また地場経済への影響の第一波をどこと捉えるのか、見極める必要がある。
過剰な投機筋への警告 (株)原弘産
金融システムがこれだけ揺らぐと、日本経済に与える影響は計り知れないだろう。バンク・オブ・アメリカが9月15日に、1株29ドル(総額500億ドル)でメリルリンチを買収することで合意したと報じられた。アメリカの大手証券会社ビッグ5と3月に公的支援を受けたベアー・スターンズも含めて、金融再編の憂き目にあっている。しかも今は大統領選挙の真っ最中で、政治的判断も遅れてしまうので、まだまだこの問題は長引くと思う。
当社はリーマン・ブラザーズによる株の大量保有が報告されている銘柄として挙げられているが(08年7月17日時点で保有割合5.05%)、単なる株主の一部であり、この株もすべてリーマンが保有しているわけではなく一般投資家へ販売しているものが多いだろう。したがって、これによる直接の影響はほとんど無いと考えている。
日本のバブルと比べて今回のアメリカ金融の崩壊は、前者がゆっくり段階をおって起こったのに対して、後者は急斜面を一気にすべり落ちた感じだ。日本のバブル崩壊の轍を踏まないようにと、アメリカの今回の対応は日本の不良債権処理を学習したうえでの行動だろう。
アメリカ金融界は莫大な資金を運用していたが、行き過ぎた自由主義に対して不満を持つ者が、金融トップクラスのリーマンに鉄鎚をくらわしてスケープゴートにしたのではないか。それによって原油や穀物などに資金を集中させていた投機筋に対して警告をしたのか、とさえ思える。デカップリング(アメリカ経済の切り離し)論があるなかで、さすがにファニーメイやフレディマック、AIGのようなアメリカトップクラスの金融機関や保険会社を潰してはまずい、ということで公的資金が投入されたが、リーマンに対しては日本のことを教訓にして公的支援を見送ったのだろう。原油が一時1バレル140ドルを上回り、食料をバイオエタノールとして転用することで投機対象とするなど、実体経済とあまりにもかけ離れていた金融経済が、むしろ本来の姿に戻りつつあるという考え方もできる。
地銀に関しては、ふくおかフィナンシャルグループがサムライ債(円建て債券)のリーマン社債約40億円分の保有を公表したが、他の地銀は個別にどうリスクを見るかで対応も変わるだろう。先行き不透明でまだ予断を許さない状況であることには間違いない。
つづく
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