前代未聞の事件
『I・B誌』を含め、時事通信社や日経、毎日、読売等の有力紙が一斉に報じた積水ハウス(株)中国営業本部・広島東支店が犯した建築業法違反事件。
何と、確認申請を行なっていなかったアパート1棟(4戸)を施主名を仮名で、しかも虚偽の許可番号を現場に掲示し施工していたという前代未聞の事件だ。
広島市の職員が現場を通りすがりにチェックしたところ、確認申請がなされていない虚偽の施主名および確認番号が現場の工事看板に記載されているのに驚き発覚した。
この件については、既に5月末~6月にかけて広島県、広島市が積水ハウス(株)を立ち入り調査したところ、故意にこうした組織ぐるみの悪質な工事を繰り返していたとは言えず、単なる担当者のチェックミスによる確認申請漏れであったと認定し、工事停止命令を出した。
(1)進行中の躯体を解体、撤去し現状復帰させること。(2)あらためて施主と新規に契約を結びなおし、新規物件として確認申請を行なうことで一件落着したものと、関係者全員が納得していた。
ところが、確認申請が受理され9月4日から着工していたこの物件の経緯を、メディアにリークした人物がいたのだ。
どうも和田積水ハウス会長の名古屋人材優遇路線に不満を抱く内部告発ではないかという噂まで飛び交っている。和田会長が中部営業本部長から専務、社長と昇進していった際に、全国の営業本部長や主力支店長に出身地の名古屋西支店や名古屋東支店等の子飼いの人材を填め込んでいった。社内ではその人事政策によって割を食った社員達からは「名古屋人にあらねば人であらじという典型的なきしめん人事だ!」という不満が充満した。
これ以降、実質的な創業者とも言える田鍋 健氏が作り上げた自由闊達な野武士集団の伝統が次第に潰えさっていく。
一旦抑えこんだかに見えた火種が再び燃え盛り始めたのだ。原因をつくった当事者である設計担当者は、社内的にも軽いお咎めだけで業務を続けてきたが、9月6日以降のマスコミの報道で改めて責任を痛感し、9月19日付で退職した模様だ。
当人もチェック漏れから始まり架空名義の現場施工が始まり、何時の時点で上司に報告しようかと悩み続け、連日針のムシロに座っているような状態だったという。
しかし、住宅メーカートップの積水ハウス(株)で何故このような事件が起きたのであろうか。
また、こういった架空名義の現場の工事が動き出して何のメリットがあるのだろうと、同業者も首をひねる。
組織的にミスが起きないように、設計担当者⇒設計課長⇒支店次長(技術系)⇒山口工場⇒建築課長⇒積和建設というように幾重にもチェック機能が働くような組織が出来上がっているはずなのに、誰も気が付いていないのだ。
PCの画面だけを眺めてチェックの空欄が埋まってさえいれば素通りしてしまう、IT管理の抜け穴に嵌まってしまったようだ。
しかし、常々「コンプライアンス」を最優先させると言い切ってきた同社が、昨年の東海地区で犯した管理建築士不在で現場を動かし営業停止を喰らった事件に続き、このような醜態をさらけ出すなど信じられないくらいモラルが低下しているのではあるまいか。
マスコミ報道でやっと腰を上げた国土交通省
数年前までは、月末に営業が契約物件を架空名義で挙げ、翌月赤伝を切るということで工場がきりきり舞をさせられていたのを思い出す向きも多いだろう。
平準出荷によるコストダウンを推し進めてきた筈の同社が、まるで幼児帰りしたかのようだ。
今月初めのマスコミ報道がなければ、そのまま問題をひた隠しにし続けるつもりだったのだろうか? 同社には大阪高検OBを監査役等に招いていたが、半年近く前の事件が今月初めに報じられるまでひた隠しに隠していたのはこういった筋からの力(封じ込め)が働いたのではないかとの見方をする人もある。
これらの報道がなされた後の、日経BPの『SAFETY JAPAN』(ケンプラッツ)や2チャンネル等でのトラックバックでの投稿が凄い。
幾つか例を挙げてみよう。
1.何時ものこと過ぎて何も言えないのではないでしょうか? 大手だから大したお咎めなくすぎるとでも思っているのでしょう。今回の場合最低でも業務停止6ヶ月は処罰されなければ真面目な建築士は一生浮ばれません。
2.いまだにホームページ等に今回の事案に関するコメントや謝罪すら無いこの会社は、罪の意識が無いのでしょうか? 自分らの有利に働く報道は素早くアップしても、不利な報道は隠し通す企業体質には疑問を感じます。
3.たいした事の無い、軽い処罰であればこれは官民癒着を連想してしまう。大手だから許される。確かに下請け企業への問題の波及も懸念されるが、今の時代業務停止でも3ヶ月くらい生き残れなければ建設会社とは言えない。いずれ破綻する。官民の癒着が無ければいずれ厳罰が下ることでしょう。
4.昔は良くやっていたのは知っていましたが、10年くらい前でもう無くなったと思っていたが、会社の体質は変わっていなかったのですね…。
5.大手住宅メーカーの社員ならではの違法行為ですね。一般の建設会社であれば、最低でも現場管理者が建築確認書の原本を一度は見ますよね。
6.積水ハウス1級建築士事務所の管理建築士と開設者(社長?)の建築基準法違反だけじゃなく、もっと重い六法の中の刑法違反ですか? こりゃ大変だ!! 広島県は警察に連絡しないの? 等々、数限りない投稿が寄せられているが紙面の都合で割愛する。
これらの批判を浴びてか漸く国土交通省も重い腰を上げて、約2週間後から立ち入り検査すると同社の社員は言うが、まるでつい最近の農水省の事故米の検査のようだ。
訪問日時を予め伝えて検査に70数回も入ったが、三笠フーズの悪事を見抜けなかっただと?
事前に調査日時が判っていれば、事前にデータの改ざんをするのはいくらでも可能だ。
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