[COMPANY INFORMATION]
所在地:山口県下関市山の田本町1-9
設 立:1984年8月
資本金:3,200万円
年 商:(07/7)約320億円
数字で信用勝ち得る
―若くして重責を担うことになりました。プレッシャーも相当だと思われます。
岩下 覚悟していた以上ですね。夜、寝床に入っても、あれもこれもと考え出すと、朝近くまで目が冴えて寝付けないほどです。でも、私以外社長をやる人間はいません。激しい競争のなかで、何としても生き残っていかなければなりません。
―新社長の若さを不安視する向きもあると思います。
岩下 取引先からは全面的に協力するという支援の言葉をいただいています。我が社は少人数でやっているので、取引先の協力が欠かせません。幸い、長い取引の会社が多く、仕入に関しては心配していません。
不安があるとすれば銀行でしょう。父も病床で「俺が死んだら銀行がカネを貸さなくなるかもしれない」と一番心配していました。信用を勝ち得るには、約束した営業数字を達成し業績を上げる以外にありません。
―経験不足をどう補いますか。
岩下 私は学卒後、すぐに当社に入社しました。父が60歳になったら引退するというので、早く会社のいろいろな仕事をできるだけ多く経験しておけということだったのでしょう。それこそ売場での雑用や掃除から始まり、何でもやりました。一般社員だったら10年かかるところを数年で経験しました。社員がいま、ついてきてくれているのも、そんな姿を見たからだと思います。
―7月で社長就任後最初の決算を迎えました。
岩下 売上高は0.5%増の323億円、経常利益は確定していませんが、14~15%増の2億4,000万円前後の見込みです。売上が伸び悩んだのは、新店が3月開業の諫早店1店だけで、閉店が2店あったためです。既存店も競合が4~5店できたため厳しかった。
11年7月期に500億円
―先代社長は積極拡大路線で業績を大きく伸ばしました。この路線は受け継ぐのですか。
岩下 今期の出店は今年末までに長崎、久留米、佐世保が決まっており、来年も2店を計画中です。中期的には年2~3店の出店で、11年7月期に500億円の売上高に持っていくのが今の計画です。ただ、スーパーは飽和状態です。売上も大事ですが、利益を上げることがより重要です。11年7月期には売上高経常利益率を1.5%~2%に引き上げたい。
―前期の経常利益率は1%を切っています。どうやって引き上げていきますか。
岩下 出店に備えて、一昨年春に約100人、昨年春は60人の新卒を採用しました。経費が先に出ていくので、利益率が低くなるのはやむを得ません。今後、こうした人材が戦力化すれば利益率も自ずと高まっていくでしょう。
―不採算店対策については。
岩下 今期は1店の閉店を計画していますが、契約で撤退できない店を除き、これで足を引っ張る赤字店は無くなります。
―おっしゃるように店舗は飽和状態です。食品スーパーだけでなく、ドラッグストアやディスカウントストアとの競争も激しい。どうやって勝ち残りますか。
岩下 基本は店舗の半径1km以内の顧客をきっちり抑えること。競合店でなく、当社の店で買い物していただく。そのために重要なのは接客です。「あの店のパートさんは親切なので次もまた買おう」と。品揃えや売価は負けていません。改めて接客教育をやり直すつもりです。
もうひとつは生鮮をしっかりと強化すること。9月末オープンする長崎店には、精肉と鮮魚売場に対面コーナーを導入します。お客さんの注文を聞いてさばき、量り売りもする。目の前で調理するので、新鮮に映り、安心感を持っていただけます。お客さんの要望を直に聞いて品揃えに活かします。
人材教育に力を入れる
―先代社長は小さな本社を標榜し、本社機能は最小限にとどめ、店舗に権限を委譲しました。このやり方は変えませんか。
岩下 基本的なところは変えるつもりはありません。スーパーの仕事の楽しみは、自分で仕入れて自分で売ることにあります。うちは、本社に営業部長が2人いるだけで、仕入れの権限の大半は5人の地区長と店舗に委ねています。店長は仕入れもするし販売もする。スーパーの商売は、お客さんと毎日接している店の人間が、どれだけ考え、どれだけ売る努力をするかで決まるといっても過言ではありません。最終的には人次第と言い換えても良い。私の仕事は、社員の自発性を引き出し、やる気のある燃える集団を作り上げていくことです。
―店長の力量で業績が左右されます。人材教育が重要になりますね。
岩下 今期から予算管理制度を作り、数字を管理するだけでなく、業績を上げた人を毎月表彰するようにしました。業績評価制度も整えていきます。
教育体制の整備はこれからです。新入社員は全員、店舗に配属し現場で教育してきましたが、これだと店長によってばらつきがあり、一貫した教育ができない。来年から全社共通の教育体制を導入する準備を進めています。
―どんな会社を目指していますか。
岩下 質と体力の備わった強い会社です。競合が出てきても負けない会社です。
<取材の後で>
「若いけど、入社してから下積みを経験し苦労している」というのが幹部の新社長評。先代社長は後継体制をつくる時間もなく逝ったため、社内のさまざまな管理体制や教育体制づくりが新社長の肩にのしかかる。当面は幹部陣の助言を取り入れながら経営に当たることになりそうで、まずは前社長の敷いたレールを着実に走る考えと見受けられた。
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