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【人生のエナジーは限りなく】 町金融の世界に生きた男の述懐(20)
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2008年9月30日 10:49

                                            




井土 芳雄 [いづち・よしお]

1947年7月25日 福岡生まれ

福岡大学 法学部卒業

手形割引を主業務とする市中金融業に勤務

退職後、現在はフリーランスの身となる

市中金融会社退職後の人生

 これまで、市中金融会社に奉職していた井土の目を通して、市井に暮らす我々が接することのない、業界の仕組みと日頃の活動、殊に、地方経済の裏街道を見てきた。井土の眼を通してこそ、裏街道が我々の前に明らかになった。また、いわゆる「町金融」と胡散臭く見られがちな業界の現実については、実は我々に思い込みが多く、誤解していた面があることも知った。

 井土は本年7月末をもって、38年間勤めた市中金融会社を退職した。誤解を受け易い業界に身を置いていたればこそ、業界から身を引いた今、誤解を解きたいとの思いから、本シリーズ"人生のエナジーは限りなく"で回想を述べることにしたのだ。そうした井土の思いに応えることができた、と筆者は考えるし、またそうあって欲しい、と願っている。
 この願いをもって、「町金融の世界に生きた男の述懐」を終える。

 ところで井土は、市中金融会社を退職してから、どのような生活を送っているのであろうか。
 ここでは、退職後の生活を、本シリーズのエピローグとして紹介する。
 井土は、市中金融会社に在職中の10年ほど前に、夫人には内緒でBMW・"R1100R"と名付けられた水平対向エンジン搭載の大型バイクを、購入していた。
 今でも風圧に身を晒し、流れる風に乗ってまとわりついてくるような薫りを嗅ぎながら、バイクを駆っている。ツーリングでは、時に阿蘇や小国を目指すことがあるが、自動車では感じることができない、季節ごとの彩りや、外気の趣を感じることを愉しみに、出掛けている。
 高速道路では時速140Kmのスピードで駆け抜け、危険とリスクを背負うことも楽しみの一つとしている。
 「自分ではボケ防止だと思っています。バイクに乗る時には腕、足、腰、そして頭も、全身をフルに駆使し、感覚も鋭敏に研ぎ澄まさなければ、バイクは正しく動いてくれません。それがバイク最大の面白さです。」
 そう言って頬を緩める。もし、バイクに乗れなくなったら自分はお仕舞いだ、と笑いながら、リタイア後の人生の喜びを語るのであった。
 「最初は妻には内緒でした。それが妻にバレた時には相当に怒られました。男としてはみっともない体で、色々と言い訳をしたものです。それでもバイクだけはやめられません。」

 井土は、今後一切、金融に係る仕事はしない、と断言する。
 「町金融業の人間としてあらぬ誤解を受けながらも、正統なる有価証券売買業に勤めているのだ、という自負だけは忘れませんでした。それでもお金の裏と表、汚い面と良い面の両方を、38年間見て来ました。だからお金に関することは、自分の人生にとって、もう充分なのです。」
 井土は、切り詰められるところはなるべく切り詰め、現在の生活を維持して行くことのできる計画を、夫人と二人、相談して立てている。身体を使うことで、きつい思いをするかもしれないが、人の役に立つ仕事をしたいと考えている。最低限の収入であっても、それで少しでも、生活に潤いを得ることができれば良いとのこと。果たして、そうした仕事を見つけ、職に就くことができるかどうかは判らない。が、何もせずに、ただ漫然と生きて行くことだけは避けたい、と願っている。

 「バイクが好き、カメラが好き、植物が好き、人と一杯飲んでワイワイ語り合うのが好き。そして本を読むことが何よりも好き。このように趣味が多く、目移りばかりしています。この年齢になっても、落ち着きがないことはなはだしい、と言わざるを得ません。もしお金に余裕ができたら、畑が欲しい。そこでじっくり土と語り合い、命を育むことができれば、これに勝る幸せはないでしょうね。」
 リタイアメント人生とはいえ、こうして趣味と希望に思いを巡らせつつある井土だ。
 「子供達も大きくなりました。いよいよ沢山の本を読み、人の体験を知り、情報を一杯仕入れ、それをどれだけ自分の行動に反映させることができるか、それがこれからの課題です。人間、どのような生き方をしても、所詮人生は一度きり。悔いのないように、精一杯課題をクリアしていきます。」

 井土には、まだまだこれからの人生が残されている。

(完)


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