福岡市議会定例会が12日に開会した。最大の焦点は用地取得費が補正予算で盛り込まれたこども病院の人工島移転。7人の議員が議案質疑に立ち、全員が人工島移転について市長に聞いた。病院用地が人工島に至った不可解な経緯、市長の公約違反。これらをただす質問もあったが、市長は「ゼロから見直した」「今後精査したい」などと曖昧な言い回しで逃げ通した。
7人のうち、共産、ふくおかネットワーク、社民・市政クラブ、無所属の4人は吉田市長の公約違反や人工島移転の矛盾を追及。これに対して自民、公明、みらい福岡の3人は、市民病院との統合移転も含め、人工島移転を前提とした質問を行い、市の原案を真っ向から否定するような対決姿勢は見られなかった。
市内の産科や小児科の医師有志が提出した人工島移転を見直すよう求める提言書については「専門医の皆様には理解して頂いていない面もあるので、十分説明していきたい」などと述べ、提言を汲み入れる意思はない。
吉田市長は「検証擬装だ」
質疑ではこんな意見が出た。
▽「こども病院の人工島移転を見直すと公約に掲げながら、前市長と同じコンサルタント会社と契約し、人工島移転以外を排除する報告書を作らせている。やってきたことは食品擬装ならず検証擬装に他ならない」
▽「病院の敷地面積が1.5~3.0ヘクタール(検証検討)→最低3.0ヘクタール(説明会)→3.5ヘクタール(基本構想案)と拡大しているが、審議会では拡張の議論をしていない。市民や議会にも説明せず、内部検討で勝手に敷地を拡大している」
▽「平地に450台もの駐車場は必要ない。立体駐車場にするなど敷地を増やさず経費を抑える発想もないのか」
▽「17万人分の反対署名が集まり、市内のほとんどの産科・小児科医、患者家族、多くの市民が反対し、再考を求めている。これは行政主導の偏った検討だった。人工島の土地売却が目的か」
▽「市の計画には財政圧縮への緊張感がない。贅沢な病院でなく、もっと無駄を省いたものを造ったらどうか」
▽「九州大学六本松跡地の検討では、大通りに面した最も高い場所の土地単価で計算している。故意に虚偽の価格を使っている」
▽「市長はたった1回の説明会に参加しただけで『溝を埋めるのは難しい』として市民や議会への説明責任を果たしていない」
市民あきれ、「馬鹿にしている」
これに対して市執行部は、すべて阿部亨保健福祉局長が挙手して答弁。下を向いたまま早口で、用意していた文書を読み上げた。続いて吉田市長が立ち上がり、「できる限り説明してきた」「今後も十分説明していきたい」「そうしたことも検討していきたい」などと紋切り型の言葉を並べた。こんなやり取りが続き、100人を超える傍聴者が注目した議場のムードは、次第にしらけていった。
傍聴していた市民はあきれていた。議場からは「なんだあの説明は…」「こんな市長は辞めたほうがいい」「絶対におかしい」といった声がもれ聞こえた。初めて市議会を傍聴したという70代の女性は「市長や市の職員があんなに不誠実だとは思わなかった。議員の態度も悪い」とあきれ顔。患者家族の1人は「(市長に)殴りかかりたいくらいの怒りを感じる。馬鹿にしている」と唇をかんだ。
このまま人工島移転は決まっていくのか。市議会は16、17、18日に一般質問、19日と22日が委員会審査、24日に採決が行われる。
【豊田伸】