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構造設計一級建築士の採点方法に疑念渦巻く 採点内容を明確にすべし(下)
特別取材
2008年9月29日 10:17

 「適判の試験は今回の試験ほど難しくない。実は適判をしていた重鎮が、適判試験に落ちた挙句、大臣認定枠で特別に適判資格者となり、そのまま構造設計一級建築士の資格まで得ていたらしい」という話も聞く。もし本当なら、「資格の意味」こそが問われなければならないのではないか。

 筆者がここまで強く訴えるのには理由がある。それは、国土交通省を中心とする官僚による一連の政策が、本来の目的をすでに逸脱しているように見受けられるからだ。改正建築基準法にしても改正建築士法にしても、「姉歯のような存在を出さない」ことが最大の目的だったはずだ。

 しかし一連の法改正は、“性悪説”に立った中小ゼネコンおよび建築士の淘汰であり、規制強化で官僚の権限を高める目的のように感じる。構造設計の資格ひとつをとってみても、適判および建築構造士などの有資格者以外は、ほぼ取得が不可能だった。つまり、長年の経験や知識よりも、結果として「ある程度のお金と時間をかけた資格」が一番の合格の決め手だったということだ。

 実際に「午前はほとんど白紙だったけど何とか受かった。資格を持っていて良かった」という声も聞かれる。実務5年という制約があるにしろ、その「実務」の評価の仕方もよく分からない。大した経験や実績が無くても同じ“5年”ではないか。

 こうした中身のあやふやな制度ほど危ういものはない。「すでに大手のゼネコンが数少ない構造設計の資格者獲得のために、多額の報酬を用意していると聞く。そうなれば、ただでさえ人手不足の構造設計者が中小ゼネコンの現場からいなくなる。当然、中小ゼネコンは淘汰されるし、名義貸しなども頻繁に行なわれるようになるだろう」と予想する建築士もいる。

 また、「工学博士の肩書きを持つ知識人であっても、試験に落ちた人がいる。勉強不足と言われればそれまでだが、今回の試験は個人の尊厳を傷つけ、国の机上の空論を現場に押し付けるものにまで発展している。その人は訴訟も辞さないと言っていた」(建築関係者)。

 採点側が模範解答を示して、どこがどうおかしいのか、皆が納得するような方法をとれば良いのだが、そうは決してしないだろう。なぜならば、採点側にミスや落ち度があった場合、誰かが責任をとらなければならなくなるからだ。行政は責任の所在を追及されることを最も恐れ、うやむやにするためにあらゆる手をつくす。

 今回の問題は、「天下り先の利権」「官製不況」のような卑近な言葉で片付けるわけにはいかないほどの社会問題に発展する恐れがある。最悪のパターンを予測したつもりだから、これまでの考えが筆者の力不足で外れてくれた方がむしろ良い、が、そうもいかないだろう。

 「マスコミの間ではこうした問題は風化しつつある」という現場の声も聞いた。マスコミの端くれとして胸に刺さる思いがしたが、筆者ひとりの力はたかが知れている。全国に散らばる一級建築士、中小ゼネコン、マスコミが一致団結して事に当たっていくことが、一番の問題解決の近道であることを、ぜひ今一度、各自が認識して行動してほしい。(了)

(大根田康介)

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