不況期は、最大のビジネスチャンス―。景気が良い時には、問題を抱えている会社でも業績が上向くが、不況になるほど経営力の差が出る。不況期こそが事業を拡大できる絶好の好機。これはビジネスの鉄則と伝えられてきた。こうしたなか、M&A(合併・買収)の達人として知られるオリックスの宮内義彦会長(73)が攻めに転じている。東証1部上場の新興不動産会社である㈱ジョイント・コーポーレーション(東京都目黒区)を買収、ミニバブルの崩壊で新興不動産会社の収益は悪化しており、M&Aのチャンス到来というわけだ。倒産秒読みがささやかれていたジョイントの買収に、関係者たちは驚きを隠せない。
危ない新興不動産会社“JAPAN”
“JAPAN”とは、証券市場に飛び交っている危ない新興不動産会社の頭文字、筆頭の「J」はジョイント・コーポレーションを指している。ジョイントも、これまでに破綻した新興不動産会社と同じように不動産流動化事業で急成長してきた。
創業者は東海林義信(60)氏、1986年に東京で戸建住宅の販売を開始した。その後、マンション分譲に進出し、東証1部上場を果たした2001年、不動産流動化事業を開始。05年にはREIT(不動産投資信託)のジョイントリート投資法人も上場。08年3月期の連結売上高1,878億円、経常利益231億円と、いずれも過去最高を記録した。
売上のうち6割強は、土地付きのオフィスやマンションを仕込んで再開発後にファンドに転売する不動産流動化事業が占める。このため、棚卸資産は2,365億円に上り、有利子負債は2,181億円に達する。だが、不動産向け融資の蛇口が閉まり、一転して、苦境に陥った。新興不動産会社がバタバタと潰れ、次はジョイントの番と見なされたのだ。
その時、救世主として現れたのがオリックスだ。9月8日、両社は資本提携を発表。オリックスグループはジョイントが実施する100億円の第三者割当増資を引き受けて、39%の筆頭株主になる。出資後に代表権を持つ副社長と取締役を派遣、ジョイントを持ち分法適用会社にする。出資とは別に、極度額200億円の融資枠を設ける。
経営が急速に悪化したジョイントは、崖っぷちからオリックスに救済された印象を与えた。ジョイントが反社会的勢力や怪しげな株主との接点がないことが支援の決め手になったといわれた。だが、救済にカネを出すほどオリックスはおめでたくない。
(日下 淳)